<マッチレビュー>
J1リーグのシーズンを折り返した湘南ベルマーレ戦から中3日で天皇杯3回戦を迎えた。相手はV・ファーレン長崎。小雨が降り、湿度と気温が高い長崎の地で、ラウンド16進出をめざしてピッチに立った。
ゴールキーパーには波多野豪選手が起用され、右サイドバックには代表活動から戻った長友佑都選手が入った。センターバックは森重真人選手の相棒にエンリケ トレヴィザン選手を選択。アンカーは東慶悟選手が務め、インサイドハーフは湘南戦と同様に渡邊凌磨選手と安部柊斗選手を並べた。前線はアダイウトン選手を中央に、右ウイングに紺野和也選手を、左ウイングにレアンドロ選手を起用した。
序盤から東京が押し込む展開。相手ゴール前でフィニッシュまで持ち込む場面を作ると、前半3分に右サイドのスペースを上手く使うと、渡邊選手が抜け出してクロスボールを入れる。ファーサイドで待ち構えていたレアンドロが豪快にボレーシュートを放ち、ゴール左隅に流し込んで東京が先制に成功した。その後もサイドで数的優位を作って相手ゴールに迫るが、そのなかでワンチャンスをモノにされてしまう。前半14分、左サイドを突破されてゴール前に鋭いクロスボールを入れられると、正面では合わされなかったが、右サイドに流れたボールを山崎亮平選手に豪快に押し込まれて追いつかれる。その後、ボールを保持したのは東京。サイドを変えながら深い位置までボールを運び、相手のスライドが遅れるスキを窺う。ボールを奪われてから守から攻への切り替えが速い長崎のカウンターには苦しんだが、時間を追うごとに中盤のプレスバックと球際への速めのアプローチが効いて反撃の芽をつぶす。主導権を握って試合をコントロールし始めたかに思えた前半の終盤、31分にディフェンスラインの背後にパスを通されると、ゴール右前で山崎選手が放ったシュートは波多野選手がブロック。しかし、これで与えたコーナーキックをクリアした際に、安部大晴選手に豪快にロングシュートを叩き込まれて逆転を許した。
ビハインドを追う東京は、紺野選手のドリブル突破を起点に相手を押し込むが、なかなか決定的な場面まで作ることはできない。このまま前半を終えるかと思われた45+1分、右サイドのタッチライン際で紺野選手のドリブル突破が相手のハンドを誘ってフリーキックを得る。レアンドロ選手がゴール正面に鋭いボールを入れると、相手ゴールキーパーがはじいたボールがファーサイドにいたアダイウトン選手のところへ。ワントラップしたアダイウトン選手はボレーシュートを豪快にゴール右隅へと流し込んで追い付いて試合を折り返した。
後半は序盤からお互いに好機を作り出す。後半4分、東京はアダイウトン選手が相手のディフェンスラインの背後にループ気味のパスを通すと、渡邊選手が抜け出してゴールキーパーとの1対1を迎える。しかし、ループシュートで頭上を抜いたものの、ボールは枠の上へと逸れた。後半7分には長崎に好機を与えてしまう。イバルボ選手に背後に抜け出されてフリーでゴールに向かわれる。しかし、相手の抜け出しに合わせて波多野選手が絶妙なタイミングで間合いを詰め、体を張ってシュートブロック。互いにチャンスを作った後は、東京がボールを保持して相手陣内で攻撃を仕掛け続ける。後半22分にはレアンドロ選手のパスを受けた渡邊選手がドリブルでひとりかわしてからシュートを放つが、相手ゴールキーパーの好守に阻まれた。相手の反撃をケアしつつ、ほとんどの時間で東京がボールを保持して相手ゴールまで迫ったが、割り切ってゴール前を固める相手を攻略し切れず、試合は延長へと突入した。
延長前半4分には、右サイドバックに回った小川選手が相手の背後にボールを入れると、延長戦の冒頭から突入されたバングーナガンデ佳史扶選手が抜け出してワンタッチで合わせたが、これは相手ゴールキーパーにセーブされる。延長戦に入ると、東京が相手陣内でプレーする時間がさらに増えていく。相手の攻撃を速い段階で食い止めて分厚い攻撃を仕掛けていくが、後半の展開と同様になかなか崩し切ることができない。すると延長前半のアディショナルタイム、左サイドのペナルティエリア手前でクリスティアーノ選手にカットインされると、ドリブルを止められず、豪快なシュートをゴール右隅へと流し込まれて勝ち越しを許した。
延長後半に入ると、中央を固める相手に対して、ワイドにボールを動かしながらサイドに起点を作ってゴールに迫る。前がかりになるあまりカウンターでピンチを招くが、最後は体を張ってブロック。終盤はアーリークロスで相手ゴール前に鋭いボールを入れ続けたがわずかに合わず。試合終了直前は立て続けにセットプレーのチャンスを作ったが、ネットを揺らすことはできず、2-3で敗れた。
[アルベル監督インタビュー]
Q、試合を振り返ってください。
A、この大会にとても高いモチベーションで臨んでいました。今日の試合、スタートから最後まで試合を支配し続けることができていました。多くのチャンスを作っていましたが、それでも勝てないことがあるのがサッカーです。ボールポゼッションだけでなく明確なチャンスの数でも相手を大きく上回っていたと思います。そういう意味でも選手たちの今日のプレーには感謝しかありません。けれどもサッカーではこういうことが起こり得ます。長崎の3ゴールのうち2ゴールはペナルティエリアの外からのロングシュートでした。そういう意味でも相手の長崎を称えたいと思います。天皇杯におけるさらなる活躍を祈っています。そして敗退したことは痛手ですが、それ以上に痛いのはエンリケの怪我です。我々にとって、とても重い怪我です。彼が早く復帰してくれることを祈っています。
Q、延長がある中で、後半の采配は何を意識していましたか。
A、まずは90分間で決着をつけることを最後まで期待して戦っていました。それが難しい場合には延長戦で複数の交代カードを切りながら試合を決めることを望んでいました。チームは上手く機能していたので、後半は必要以上に交代をする必要はありませんでした。チームが上手く機能していたので、追加点が入ってもおかしくない状況だったと思います。入らなかったことのほうが不思議な展開でした。チームが機能していたので、後半の残り時間で試合を決められると思っていました。そして延長戦では疲労に応じて交代のカードを切る展開となりました。
[選手インタビュー]
<渡邊凌磨選手>
Q、先制点につながったスペースを使ったシーンは狙い通りでしたか。
A、センターバックをサイドに釣り出せれば、というのがチームとしての狙いでした。ボールが来なくても、あのスペースに走るのは大事だと思っていて、そこで自分がしっかりと走っていたことがゴールにつながったと思います。
Q、2-2で試合を折り返した後、後半にあと1点が取り切れなかった要因はなんでしょうか。
A、僕自身、もっと中盤で前を向ける場面がありましたし、シュートも何本か打ちましたし、それをしっかりと決め切るということが必要です。
Q、天皇杯は敗退となりましたが、今後のリーグに向けた意気込みを教えてください。
A、もう終わってしまったことなので切り替えて、リーグ戦でひとつでも上の順位をめざしてやっていければと思います。
<安部柊斗選手>
Q、悔しい敗戦となりましたが、試合を振り返ってください。
A、試合の入りの部分ではうまく入れたと思いますし、得点も取ることができました。さらにここから畳み掛けようというなかで、軽い守備、軽いミスから失点をしてしまって逆転をされてしまいました。一度は追いつけたことは良かったと思いますが、後半はもう少し決定的なチャンスを作ることができていたら展開は違ったのかなと思います。
自分たちの方が長くボールを握っていましたが、なかなか崩すことができなかった展開だったと思います。
Q、最後のところのアイディアはずっと課題になっている部分だと思います。
A、ゴール前でのクオリティやアイディアは自分たちからもっと繰り返し仕掛けて回数を増やさなければいけないと思います。髙萩選手が入ってきてテンポが出てきて流れが変わったと思いますが、アイディアを持った選手に頼るだけではなく、チーム全体でイメージやアイディアを共有して、トレーニングから積み重ねて改善していかなければいけないと思います。
Q、すぐ次の試合は来ます。意気込みを聞かせてください。
A、負けてしまい、天皇杯は終わってしまいました。もう切り替えるしかないと思いますし、次はリーグ戦の後半戦の初戦になるので、今日の悔しさをぶつけて、少しでも上の順位に行きたいので、その気持ちをプレーで表せるように戦いたいと思います。
<波多野豪選手>
Q、最後の方はなかなかチャンスが少ない中で、どのように戦うべきだと感じていましたか。
A、後半は、なかなかゴールが入らない中で、自分がどのようにチームを助けることができるかを考えながらプレーしていました。このような試合展開になることはある程度予想していたので、その中でチームを助けることができなかったことは悔しいと感じています。
Q、中3日でリーグ戦も控えています。
A、まずは東京に戻って今日のことを一度整理して、リーグ戦に向けてしっかり準備して試合に絡んでいきたいと思っています。
Q、個人の守備範囲や攻撃の起点になるなど監督から求められている面について教えてください。
A、攻撃面で監督に求められているところはシンプルに繋ぐところですので、そこはある程度できてきているかなと思います。守備面ではチームを救うようなセーブをしてほしいといわれています。その点では今日は応えることができなかったので、自分自身が成長しないといけないところだと感じています。より改善していきたいと思います。