<マッチレビュー>
J1リーグはシーズンを折り返し、今節から後半戦に突入した。一度対戦した相手とホームとアウェイを入れ替えて2巡目の戦いになる。後半戦スタートの一戦は、ホーム味の素スタジアムで0-1で敗れたサガン鳥栖との一戦。リーグ戦では6試合連続で敗れており、戦績の上では苦手にしている相手だ。直近の公式戦2試合で敗れている東京としては、成長の確かな手応えとともに結果も求めたい一戦となった。今節が海外移籍前の東京での最後の試合となる小川諒也選手はスタメン出場。右サイドバックには中村帆高選手が入った。
1st HALF-主導権を握り合う展開で先制を許す
序盤、前線からボールサイドに寄せてくる鳥栖に対して、東京は焦らずにいなして後方でボールを動かしていく。フィニッシュの場面までは至らないが、インサイドハーフやウイングが相手選手間のギャップでボールを引き出し、攻撃のスイッチを入れて相手陣内に入る場面も作り出した。
時間が経過していくと鳥栖がボールを保持する時間が増えていく。ボールを奪った後も相手の攻守の切り替えが素早く、後方でプレスをはがせずに相手にボールを奪い返される場面が続いた。前半20分前後で、ディフェンスラインから中盤を飛び越えてセンターフォワードのアダイウトン選手にくさびのボールを入れられるようになると、徐々に鳥栖の陣形を押し下げて相手陣内に入っていけるようになる。前半26分には安部柊斗選手と渡邊凌磨選手のワンツーリターンで右サイドのスペースに安部選手が抜け出す。相手のディフェンダーが慌てて下がるところで、安部選手はマイナス方向にパス。そこに待ち受けたアダイウトン選手がワンタッチで合わせたが、相手ゴールキーパーの攻守に阻まれた。
徐々に押し返しはじめたかと思われた前半30分、セカンドボールを岩崎悠人選手に拾われると、プレッシャーをかけることができずに豪快なミドルシュートをゴール右上へと決められて先制を許した。そのセカンドボールの回収を狙った場面で安部選手が負傷し、レアンドロ選手をピッチに送り出し、渡邊選手がインサイドハーフにポジションチェンジした。
1点を追う東京は、前線に入ったアダイウトン選手、レアンドロ選手を起点にしてペナルティエリア付近でボールを収めるが、相手の帰陣が早くスペースを埋められてシュートまで持ち込むがことができない。渡邊選手が抜け出してゴールキーパーと1対1となるシーンもあったが、相手ゴールキーパーの好セーブに阻まれて同点に追いつくことができない。主導権をお互いに握り合う中で、一瞬の隙を突かれた1点のビハインドで試合を折り返した。
2nd HALF-反撃姿勢を継続するも失点を重ねる
攻勢に出たい東京だが、後半3分、ゴール前に押し込まれたところで右サイドからのクロスボールをクリアし切れず、詰めていたジエゴ選手に押し込まれて追加点を許す。なかなかボールを前線に運べずに時間が過ぎていたが、後半8分にはパスワークのテンポを上げてバイタルエリアでレアンドロ選手が受けると、ディフェンダーを次々にかわしながらシュート。枠を捉え切れなかったが、前半よりもパススピードを上げてダイレクトプレーを増やすことで、相手ゴール前まで迫る場面が増えていく。
後半15分には同時に3選手を交代し、山下敬大選手、東慶悟選手、長友佑都選手をピッチに送り出した。すると後半18分には、相手の背後を突いた山下選手がボールを引き出すと、受ける前に相手ディフェンダーが足を出したが、クリアし切れなかったボールをレアンドロ選手が拾ってゴールを狙う。
東京の攻撃が活性化しはじめた後半25分、前線へのくさびのパスを潰されると、相手の素早い攻撃への切り替えに対応できず、右サイドで受けた本田風智選手にカットインからニアサイドにシュートを決められてしまう。さらに後半33分にはビルドアップの場面で連携ミスからボールを失うと、カウンターを受けてペナルティエリアの中でワイドに揺さぶられて垣田裕暉選手に押し込まれた。
ビハインドが広がった中でも、しっかりとボールをつなぎながら反撃の糸口をつかみたい東京だが、後半40分にはディフェンスラインからサイドにつなごうとしたボールを奪われると、ボールサイドに寄せ切ることができずに垣田選手に豪快に決められて5失点目。鳥栖のゴールに向かうプレーはタイムアップの笛が鳴るまで続けたが、前半に比べると決定的な場面は作れず、小川選手の海外移籍前ラストマッチは悔しい結果となった。
MATCH DETAILS
FC東京
STARTING Ⅺ
GKヤクブ スウォビィク
DF中村帆高(後半15分:長友佑都)/木本恭生/森重真人(後半38分:岡崎慎)/小川諒也
MF松木玖生(後半15分:東慶悟)/青木拓矢/安部柊斗(前半33分:レアンドロ)
FW渡邊凌磨/アダイウトン/永井謙佑(後半15分:山下敬大)
SUBS
GK波多野豪
FW紺野和也
GOAL
―
サガン鳥栖
STARTING Ⅺ
GK朴 一圭
DF原田亘/島川俊郎/ファン ソッコ/ジエゴ
MF堀米勇輝(後半21分:菊地泰智)/福田晃斗/小泉慶(後半38分:藤田直之)/小野裕二(前半17分:本田風智)
FW岩崎悠人(後半38分:相良竜之介)/宮代大聖(後半21分:垣田裕暉)
SUBS
GK守田達弥
DF中野伸哉
GOAL
前半30分:岩崎/後半3分:ジエゴ/後半25分:本田/後半33分:垣田/後半40分:垣田
[アルベル監督インタビュー]
Q、試合を振り返ってください。
A、前半と後半で展開に明確な差があった試合でした。前半に関しては我々も決定的なチャンスを複数作っていましたし、試合を良い形でコントロールできている時間も多かったと思います。決定的なチャンスも2つありました。ただ残念ことに、安部柊斗が倒れている間に鳥栖のシュートが決まってしまいました。
そして後半に関しては、前半とはまったく違った展開だったと思います。簡単にボールを失う回数も多かったですし、守備のインテンシティも期待通りのものではありませんでした。戦う姿勢が足りなかった場面も多かったと思います。それが重なり、複数失点につながってしまいました。
昨シーズンまでこのチームが展開していたサッカーと今シーズン求めているものは違います。そこの変化に適応するのは必ずしも簡単なことではありません。改革をしている今シーズンがとても難しくなることは誰もが予想していましたが、後半のプレーは許されてはいけないと思います。チーム全体に対して高いインテンシティを提供することを安部柊斗や松木玖生に頼ってばかりいてはいけないと思います。
今日の試合をしっかりと厳しい目で反省した上で、改善して次につなげていきたいと思います。そして我々がめざすプレースタイルを実現するには、今日の後半のような形で簡単にボールを失う回数が多くあっては表現できません。
Q、長崎を相手に120分を戦った影響は大きかったでしょうか。
A、120分プレーした選手は4、5人しかいませんでした。それ以外の選手は水曜日に120分プレーしたわけではありません。決してフィジカルコンディションが大きな原因だったとは思いません。それ以外の部分に原因があるので、自分たちを批判的に振り返る必要があると思います。
Q、その中で、120分プレーしていた森重選手が、後半の途中で交代することになりました。
A、森重に関して言えば、疲労が影響したかもしれません。ただ、我々は試合に出られる状態のセンターバックが多くないのが現状です。エンリケ(トレヴィザン)も怪我をしてしまいました。
東京という名を背負ったこのクラブは、もっと上をめざさなければいけないと私は思っています。上をめざして戦い続けなければいけないと思います。プレースタイルの改革ということもありますが、大切なのはこのクラブのメンタリティの改革でもあります。
Q、実際に想定していた鳥栖との差はありましたか。
A、鳥栖というチーム、そして監督をとてもリスペクトしています。彼らの表現しているサッカーしかり、今日の試合内容しかり、今日の勝利を称えたいと思います。ただ、今日の複数失点での敗退というのは我々に原因があります。
[選手インタビュー]
<小川諒也選手>
Q、試合を振り返ってください。
A、長崎戦で120分間戦い、チーム全体として疲労で体が動いていなかったです。ですが、プロサッカー選手である以上そんなことを言い訳にできないですし、体が動かないなら動かないなりに自分たちで戦い方を修正したり、できることがあるはずです。良い方向に変えていける力が今の東京にはないということだと思います。
Q、東京での海外移籍前最後の試合でした。
A、ウォーミングアップの時から分かっていましたが、6番のユニフォームを着て応援に来てくれたファン・サポーターの方も多かったですし、また鳥栖のファン・サポーターの方も含めて自分が名前を呼ばれた時にすごく大きな拍手をしていただき、本当に今日でJリーグを離れるんだなという実感をしました。
Q、あらためて小川選手にとって東京はどういうチームですか。
A、まだまだ常勝のチームではないですし、発展途上の部分が多くありますが、本当にポテンシャルがあって、優勝するだけのメンバーが揃っていると思います。自分が7シーズン半過ごしてきたのが東京で良かったと思っています。
Q、個人としては新しい挑戦が始まります
A、まずはポジションを獲るところからのスタートなので、プロに入った時のようにガムシャラにどんどんアピールできればと思います。必ずポジションを掴んで、日本にいる東京のファン・サポーターの皆さんに良い報告ができるように頑張りたいです。
<森重真人選手>
Q、試合を振り返ってください。
A、決められるところを決めていれば、違った形で試合を折り返すことができたかなと思います。流れが悪いなかで後半に先に失点してしまって、失点の時間帯も含めて相手にリズムを持っていかれました。
Q、水曜日に120分戦ったダメージはありましたか。
A、思ったより動けたなという感じがありました。そこは問題なくプレーできていました。
Q、公式戦3連敗です。次に向けた立て直しは何が必要ですか。
A、今すぐここで何をするかというのは分からないですが、自分たちでしかこの状況は立て直せないし、こういう時期が来るのは分かっていたことです。バタバタしないで、やるべきことをやっていくしかないと思います。
<東慶悟選手>
Q、難しい状況での交代出場でしたね。
A、流れを変えたかったのですが、ズルズルいってしまいました。みんな疲れがあったので、運動量も増えていかなくて完敗です。
Q、失点が続くところをどう改善していきたいですか。
A、結果論になってしまいますが、選手がやれる部分もありますし、監督やスタッフと話しながら、冷静になって何を感じるのか、何をやらないといけないのか、何を改善しなければいけないのか、休んだ後にしっかりと話せたらと思います。
Q、メンタルの部分の影響もありますか。
A、サッカーではメンタルも左右する部分です。踏ん張りどころでもあると思いますし、新しい監督になって変わる時というのは色々なことが起きるので、それをちゃんと受け止めて前に進んでいきたいと思います。
Q、小川選手の海外移籍前最後の試合で、チームとしてもどうしても勝ちたかった試合だったと思います。
A、そこはみんなも気持ちがありましたし、(小川)諒也は諒也で向こうに行っても、東京で経験したことを活かして頑張ってほしいですね。思い切ってやってほしいです。
Q、鳥栖まで応援に駆け付けたファン・サポーターに向けてメッセージをお願いします。
A、天皇杯の長崎から来てくれた方もいると思うので、本当に申し訳ないという気持ちと、なんとかここで踏ん張ってまた盛り返してサポートに応えたいと思います。
<松木玖生選手>
Q、試合を振り返ってください。
A、今日の試合は、ディフェンスラインと前線がすごくバラバラで間延びしてしまい、中盤のラインを攻略されてしまいました。ディフェンスラインが引いてしまうと自分たちも自ずと下がらないといけなくなるので、カウンターへの体力的な部分というか、相手に対して圧力を上手くかけられなかったです。
Q、U-21日本代表の遠征でウズベキスタンから帰ってきて初めての試合でしたがいかがでしたか。
A、コンディション面も良くなかったですし、自分がもっと守備の強度を上げていければ試合展開は変わっていたと思います。まだまだなところが多いですが、逆にこの経験をしたからこそ後半戦にどう立ち振る舞ってサッカーをしていけば良いかが明確になったと思います。体力的にどうこうといった話ではなく、勝負に勝てるようにしていきたいです。