＜前節・FC町田ゼルビア戦のレビュー＞
味の素スタジアムで行われたホーム開幕戦。第1節横浜FC戦に勝利した東京は、同じ東京を本拠とするFC町田ゼルビアを迎え撃った。
白星スタートを切った前節と同じスターティングイレブンで連勝をめざした東京は、序盤から俵積田晃太選手の果敢なドリブル突破やセットプレー、ゴールキーパーの野澤大志ブランドン選手を最終ラインに組み込むようなビルドアップで得点機会を探っていく。攻撃では相手の積極的なプレスに押されて思うようにボールを前に運ぶことができなかったものの、守備では最終ラインを中心に集中したプレーを見せて前半が終了。両チームとも同じシステムを採用したこともあって完全なミラーゲームとなり、膠着したまま後半を迎えることになった。
後半も同様の展開が続いたなかで、俵積田選手の仕掛けや仲川輝人選手のスルーパスからマルセロ ヒアン選手の抜け出しなど徐々にゴールの可能性を感じさせていく。選手交代を含めて状況打開を狙いつつ、相手を自由にさせないサッカーを見せていたが、後半37分に右サイドを破られると、一瞬のスキを突かれて中央で押し込まれ、痛恨の先制点を許してしまう。
失点直後にＪリーグ復帰後の初出場となる橋本拳人選手を投入し、流れを変えるべくトライしていく東京。しかし、最後は途中出場したエヴェルトン ガウディーノ選手の左足ミドルがキャッチされたところで反撃実らずタイムアップ。昨シーズンに味わった悔しさを晴らすべく臨んだゲームで、またも厳しい結果となってしまった。
＜試合プレビュー＞
前節に続いて中3日で行われるホーム連戦で対戦するのは、青赤に縁のあるメンバーを数多く擁する名古屋グランパス。開幕から1勝1敗という東京にとっては、まずはホームでしっかりと勝利して白星を先行させたい。
今シーズンから取り入れているシステムは、開幕からの2試合で何度か連動したアタッキングを見せて可能性の片鱗を披露しているものの、ここから成熟度を上げていくことでボールを保持しながら攻め込む形の再現性を高めていこうとしている段階。前線のスピードを活かした速攻と使い分けるためにも、ポゼッションする際もできるだけ後ろに重くならずに押し上げて前を向きたい。そしてフィニッシュから逆算した攻撃を仕掛けていきたいところ。
そういう意味で期待が集まるのが、前節で復帰後の初出場を果たした橋本拳人選手。前線からの積極的なプレスだけなく、中盤の底からドリブルで持ち上がるプレーでチーム全体に前を向かせることができていた。起用方法に関わらず、ピッチに立てば意図のあるプレーで攻守に存在感を発揮してくれそうだ。
対する名古屋は、川崎フロンターレとの開幕戦で0-4で敗戦。シーズン前のキャンプでは仕上がりの良さを見せていたが、先制点を許したことで気落ちして失点を重ねてしまった形となった。そして前節は前年度王者のヴィッセル神戸に2-2の引き分け。左サイドの徳元選手、右サイドの内田選手という東京にとって“昔なじみ”のプレーヤーが攻撃でアクセントとなり、一度は逆転を許しながらリバウンドメンタリティを見せてドローに持ち込んだ。
なかでも東京が警戒すべきは、在籍時からスタジアムを沸かせていた徳元選手の左足だろう。神戸戦では強烈な直接フリーキックで先制ゴールを決め、果敢なオーバーラップと高精度のクロスで何度もチャンスを生み出していた。ロングスローも持ち合わせており、東京としては絶対にケアしておかなければいけない存在となる。また、今節は長谷川監督、永井選手、そして昨シーズン限りで一度は引退を決意しながら、現役復帰したゴールキーパーの児玉選手も在籍するなど懐かしいメンバーとの再会も楽しみな一戦。松橋力蔵監督にとっては日産自動車サッカー部時代の先輩でもある長谷川監督との対戦にもなる。
2016シーズン以降、名古屋相手には公式戦ホーム無敗という好相性だが、試合が始まったら過去の成績は関係ない。まずはしっかり目と頭を働かせ、的確な判断とボールやゴールへの強い意識でゲームを支配しながら、味の素スタジアムでの今シーズン初勝利を手にしたい。
[松橋力蔵監督 インタビュー]
Q、今節の対戦相手、名古屋グランパスの印象を教えてください。
A、昨シーズンから継続して積み重ねてきているもの、チームとしてのやり方を徹底している印象です。もちろん、選手の入れ替わりもありましたし、選手個々のクオリティも高いと思います。
Q、永井選手のスピードも注意すべきポイントの一つですか。
A、スピードだけで勝負しようとすると勝てる選手は少ないかもしれませんが、そこはタイミングや1メートル、1センチのポジショニングにこだわることが重要です。永井選手をはじめ前線にボールを入れさせない、ボールが入ったとしても良い状態でボールを預けさせないことを意識して、未然に防いでいきたいです。
Q、前節のFC町田ゼルビア戦ではビルドアップが整理されていましたが、得点に繋がるチャンスが少なくなってしまった印象でした。
A、ファイナルサード（フィールドを3分割した時に相手のゴールに近い3分の1のエリア）での前に飛び出すプレー、積極的に仕掛ける動きを得意とする選手が東京には多くいますし、少し目線を変えて、選手たちには伝えていきたいと思います。味方だけではなく、サッカーなので相手をしっかりと視野に入れなければいけません。ここまでの2試合、シュート数も多くないことは事実ですし、仮に数が出たとしても得点に繋がるクオリティや可能性が次に求められます。攻撃の“作り”の部分をしっかりと確保しつつ、シュートに繋げていきたいです。ゴール前での思い切りの良さも重要になってくると思います。得点の確率を高めるものはシュートです。その意識をここからさらに高めていきたいと思います。
[選手インタビュー]
＜岡哲平選手＞
Q、前節は高い守備強度でチームに大きく貢献していました。
A、失点シーンを除けば、手応えを感じるプレーが出せた試合でした。何より高い集中を切らさずにプレーできましたし、一つひとつに対してアラートさを持って対応できました。その一方で、攻撃面で前線のプレーに関わる回数が少なく、ダイナミックなプレーができませんでした。僕らのホームである味の素スタジアムで勝たなければ意味がないですし、そのために勝ちにこだわるプレーの選択をピッチで表現していきたいです。
Q、開幕戦に比べ、ビルドアップがよりスムーズになっていました。
A、立ち位置を意識しました。横浜FC戦後、チームとしてビルドアップの部分は課題としてありましたし、他の選手もパスに対して受ける意識が非常に高まっていたと思います。パスコースも必然的に1から2に増えて、スムーズにボールを回せたことは次に繋がると思います。
Q、FC町田ゼルビア戦は相手のストロングポイントをしっかりと抑えた一方で、攻撃の厚みに課題が出てしまいました。
A、守備面でやられる気はしませんでしたが、攻撃面では相手のゴール前に飛び込む回数や押し込む時間がそれほど多くなかった印象です。敵陣でのプレー時間を増やす、シュートに繋がるプレーを増やすことを次節から意識していきたいです。もうひとつは、マルセロ ヒアン選手の特長を活かせなかったことです。ポストプレーをせざるを得ないシーンが多くなってしまい、相手の守備の圧力もヒアン選手に集中してしまいました。彼のスピードを活かすパスや走り込んだことで生まれる別のスペースへの供給があれば、攻撃がさらに良くなっていくと思います。
＜エヴェルトン ガウディーノ選手＞
Q、前節の振り返りをお願いします。
A、FC町田ゼルビア戦は、チームとして負けてはしまいましたが、悲観するような内容ではなかったと思います。拮抗した試合展開で両チームともに少ないチャンスでしたし、私自身のミドルシュートを含めて、しっかりと得点に繋げたかったです。
Q、セットプレーのキッカーや攻撃のアクセントなど短いプレー時間のなかで、良さも見えました。
A、沖縄キャンプから継続して良いトレーニングを積み重ねることができていますし、コンディションも良いです。町田戦はベンチスタートでしたが、私以外の選手含めて、いつでも良い状態でピッチに入るスタンバイができている状態でした。セットプレーを含め、アシストや得点に絡むプレーでチームに貢献していきたいです。
Q、昨シーズンと比べ、より攻撃的な位置でプレーする回数が増えていると思います。
A、今のポジションはとてもプレーがしやすく、サイドの選手、フォワードとの距離感が重要だと思っています。攻撃時には様々な形で前線の選手とのコンビネーションでゴールを狙っていきたいです。フォワードの位置にはマルセロ ヒアン選手もいますし、同じブラジル国籍選手として、近い距離でコミュニケーションをとれることは、他の選手にはない我々の強みだと思っています。彼のプレースタイルももちろん理解していますし、良い連携から得点にも繋げたいです。
Q、水曜日に名古屋グランパス戦、土曜日には鹿島アントラーズ戦と連戦が控えています。
A、連戦をチーム一丸となって乗り越え、勝点3をしっかりと積み重ねたいです。私自身、連戦でプレーすることは得意ですし、常に試合を控えていることでモチベーションも非常に高いです。出場するためにしっかりとチャンスを掴んで、チームに貢献したいと思います。
