<マッチレビュー>
リーグ戦前半戦も残すところあと3試合。中3日で戦う連戦の2試合目は、アウェイに乗り込んで清水エスパルスと対戦した。5月に入って勝利から遠ざかっている東京は、4月29日のガンバ大阪戦以来の勝利を狙う一戦。連戦を考慮して、アルベル監督は前節からメンバーを若干入れ替えた。
ルヴァンカップのアビスパ福岡戦で好プレーを見せた東慶悟選手がアンカーでスタメン入り。右サイドバックには中村帆高選手が起用された。前線では右ウイングに渡邊凌磨選手が、左ウイングには永井謙佑選手が入った。
立ち上がり、ボールサイドへ前からプレッシャーをかけてくる相手に対して、東京はサイドに寄って人数をかけてボールを動かし、相手のディフェンスラインが高い位置をとったタイミングを狙ってその背後にボールを入れて攻撃を試みる。東選手が自陣の深い位置でボールを引き出して、少ないタッチで動かしてリズムを作ると、周囲の選手が絶妙な距離でサポートに入って相手のプレスをはがしていく。前半8分には清水の中盤にギャップが生まれたところで松木玖生選手がボールを受けて前を向いてドリブルで運ぶ。相手の最終ラインが下がって対応したところで、松木選手は思い切ってミドルシュートを狙う。ディエゴ オリヴェイラ選手に当たってコースが変わったシュートは左ポストにはじかれた。
その後、相手のテンポの速い攻撃に自陣に押し込まれる場面が続くと、前半20分に右サイドから入れられたクロスボールをゴール前でチアゴ サンタナ選手にワンタッチで合わされるが、シュートは右ポストに当たる。ピンチを凌いだ直後に好機。前半22分には相手のディフェンスラインが整っていないタイミングで永井選手から中央のディエゴ選手にスルーパスを送る。これは相手ディフェンダーにカットされるが、詰めていた安部柊斗選手がセカンドボールを回収すると、ペナルティエリア内左寄りの位置に入ってきた松木選手にパスを通し、松木選手は左足を振り抜いたが相手ディフェンダーにブロックされた。
前半の終盤に入ると、相手が連動してパスコースを消しながら前線にプレスをかけてくることでビルドアップがスムーズにいかず、パスミスや中盤で奪われてなかなか攻撃のリズムを作ることができない。パスコースを作れずに後方で回す時間帯が続いた前半45分、森重真人選手が左サイドの小川諒也選手につけたところで相手のプレスをはがすと、相手陣内にボールを持ち出した小川選手は下がってボールを受けに来たディエゴ選手にパス。ディエゴ選手が背後に背負った相手ディフェンダーの股を通してボールをつなぐと、ゴールに向いて飛び込んできた渡邊選手が思い切りよくミドルシュートを狙う。一度は相手ゴールキーパーにはじかれたが、こぼれ球に詰めていた小川選手が押し込んで、今シーズン初ゴールで東京が先制に成功した。
後半に入ると、東京のポジショニングとパスのテンポが上がり、清水のプレスをいなしてビルドアップし、相手陣内にスムーズに入っていけるようになる。中央とサイドを使い分けながら相手に的を絞らせず、ゴール前に相手を押し込んで分厚く攻撃を続けていく。すると後半16分、相手がディフェンスラインでボールを動かしているところで、相手のパスを読んだ小川選手がインターセプト。ペナルティエリア内中央の位置に入ってきたディエゴ選手にパスを通すと、ディエゴ選手は後方からペナルティエリアの右寄りスペースに飛び込んできた安部選手を使う。タイミングが合わずに安部選手はシュートを打てなかったが、持ち直してマイナス方向へのクロスボールを送る。ファーサイドに飛び込んできたのはインターセプトした勢いのままゴール前に入ってきた小川選手だった。相手ディフェンダーの背後から勢いを持ってジャンプし、打点の高いヘディングでゴールに流し込んで東京がリードを広げた。
リードを広げて以降は、さらにパスのテンポが上がって相手を自陣に押し込み続ける。一度奪われても距離を近く保っており、ボールホルダーに次々とプレッシャーをかけてすぐにボールを奪い返してショートカウンターでまたゴールを狙う展開が続いた。そして後半31分、右サイドで相手陣内深くまで押し込んでゴールライン近くでディエゴ選手がマイナス方向にボールを戻すと、ペナルティエリアの右角付近にいた中村選手はワンタッチでループ気味のパスを送り込む。相手がディフェンスラインを上げるのとスイッチして安部選手が背後をとり、頭でゴールへと流し込んで大きな3点目を奪った。
試合終盤になってもボールを保持し続ける東京。後半45分には三田啓貴選手がポストプレーから相手の背後にパスを送ると、抜け出したアダイウトン選手がスピードに乗って相手ゴールへ。ゴール左斜めまで迫ってシュートを打ったが、これは相手ゴールキーパー権田選手の好守に阻まれた。アディショナルタイムに入ってからも東京の球際のプレスとパスワークは強度とスピードが落ちず、アルベル監督がめざす「ボールとともに守備をする」形でクリーンシートを達成。リーグ戦5試合ぶりの勝利を挙げた。
[アルベル監督インタビュー]
Q、試合を振り返ってください。
A、前半は良い形で試合をスタートできました。しかし、前半の中盤に15分ほど我々のプレスの仕方のところで迷いがあり、相手にボールを譲ってしまった時間がありました。我々としてはより高い位置で守備をしたかったのですが、なかなか共通理解を持つことができず、ズルズルと守備ブロックが下がってしまいました。清水はボールを持った時には危険なプレーをしてくるチームです。そういう意味でも、前半に我々が苦しんだ時間がありました。しかし、前半の終盤にかけてその問題を解決して、前半が終わるまで、そして後半は45分間を通してしっかりと我々が支配する試合展開になりました。
ここ数試合、良いプレーができていました。今シーズンのスタート後の数試合は、よりゴールに対してダイレクトなプレーが多い試合展開をして勝点を獲ってきました。その後、チームは成長し、プレースタイルを段階的に理解するようになりました。そしてボールポゼッション率も高くなりましたが、なかなか結果が伴わない試合が続きました。そしてチームはさらに成長して、今シーズン初めて「ボールを愛するサッカー」というのをしっかりとピッチで表現する形で勝利を収めることができました。シーズンスタートの頃はボールを保持することに怯えてしまうチームでした。今までに現在のようなプレースタイルをしてこなかった選手が多かったことが理由です。その後、ボールを保持するように成長していきましたが、ボールを愛するようなプレーができていたかというと、必ずしもそうではなかったと思います。前節までの数試合は良い結果は出ていませんでしたが、良いプレーは十分にできていました。そして今日、選手たちは自信とともにボールを愛する形で我々のプレースタイルを表現し、そして勝利を手にしました。当然我々のプレースタイルはボールを持っている時だけではありません。ボールを持っていない時のアグレッシブな守備も重要です。
選手たちにも直接伝えましたが、今日はFC東京のプレースタイルが変わり始めたスタートの日であったと思います。ただし、毎試合複数得点で勝利を収めることができるかというと、サッカーはそれほど簡単なものではありません。しかし、大きな一歩を踏み出した試合だったと思います。しかも今日は、勝利を収めただけではなく、選手たちが良いプレーをしたという実感を持っていたと思います。ボールを愛するサッカーがどのようなものであるかを、しっかりと実感できたという意味でも大きな一歩になりました。選手たちはみんな幸せそうな表情をしていました。その中でも、今日素晴らしいプレーをしていたと思うので、東慶悟の名前を挙げさせていただきます。今までワンボランチでプレーすることがなかった彼が、90分間ワンボランチとして素晴らしいプレーをしていました。ディエゴもゴールを決めていませんが、試合を通じて素晴らしい形でチームに貢献してくれました。そして試合終盤に途中出場した(安田)虎士朗も少しずつトップチームに絡んできています。彼のような若い選手の成長をあらためて評価したいと思います。
[選手インタビュー]
<小川諒也選手>
Q、試合を振り返ってください。
A、今日は、結果として自分が点をとりましたが、チームとしての流れも良かったですし、ここ数試合モヤモヤするような展開が続いていた中で、上手くはまったなという感じがした試合でした。
Q、前半の途中で相手のペースになる時間帯もあり、あの先制点はすごく大きな1点だったと思います。
A、前半の最初は相手も元気で、ストレスをかけにくる部分があって、そこで自分たちもなかなかはがせない場面が出てきました。自分たちがやるべきことをやり続けて、相手の足が止まってきたところで、本当に良い時間帯に点がとれたと思います。まずは森重選手から(相手のマークを)1枚はがせるパスが出てきたこともそうですし、ディエゴがしっかり斜めのくさびを受けてくれたこともそうですし、(渡邊)凌磨がファーサイドにゴールキーパーがはじくようなシュートを打ってくれたことも、そのすべてがつながった得点でした。90分間を通して良いつながりがある試合でした。
Q、2点目は、小川選手が高い位置でボールを奪って、そのままゴール前に飛び込んで決めた形でした。
A、そこはアルベル監督がテーマにしているところで、即時奪回、自分たちが保持していたボールを奪われたらすぐに奪い返すというところです。あの場面では、(松木)玖生が相手にプレスにいった時に、裏へのパスを出せないくらいに追ってくれていたので自分も前に強くいけました。そこからもディエゴが斜めにいて、(安部)柊斗も冷静にプレーしてくれました。焦って無理やりシュートを打って相手に当てたりする場面とかもあったので、今日の試合はゴール前でみんなが最善の判断ができたんじゃないかと思います。
Q、チームが今シーズンめざしているスタイルを表現できたのではないですか。
A、今日上手くいったからといってこれからの試合でも上手くいくとは限りませんが、今日のようなサッカーが、自分たちがめざしているスタイルでもありますし、あのような流れからの得点をもっと増やしていきたいですね。
<安部柊斗選手>
Q、試合を通してチーム全体で連動しながら守備ができていたと思います。
A、本当に試合前のアップからロッカールームでもみんなすごく気持ちが入っていて、声もすごく出ていて、その気持ちがピッチで90分間通して前面に表現できたと思います。
Q、これまでだと良いところまで運んで最後のラストパスが繋がらない場面が見かけられたのですが、今日の試合はシュートまでいける場面も多くみられました。
A、分析でゴールキーパーがボールを少し弾くというのがあったのでシュートを積極的に打っていくことと、センタリングが効果的だとミーティングで話していたのでみんなで意識してプレーできた結果が3点につながったと思います。シュートを増やしていかないと得点は生まれないと改めて感じました。
Q、相手のギャップに入り縦パスからチャンスをつくれていたと思います。
A、渡邊選手が相手のギャップにうまく入って前を向くシーンが多くて、そこはチームとしては狙い通りだったので、そこにセンターバックの森重選手と木本選手が良い形でくさびのパスを入れていました。そこに入ってからもっと相手に圧力をかけて攻撃をしていこうというのはミーティング通りでもあり練習通りでもあったので良かったと思います。
Q、チームでどんな狙いをもって試合に入りましたか。
A、本質の部分で負けないというのをチームのなかですごく意識してプレーしました。サッカーはそこが負けていては話にならないのでそこからしっかりチームとしてやろうと試合に入れたのが結果に繋がったと思います。
Q、自身リーグ戦2点目でしたがボールがくると信じて走りこみましたか。
A、前節、前々節と2試合連続で1対1の場面があり決められなかったので自分自身も責任を感じていましたし、悔しかったのでゴールを決めきることができ良かったです。得点の場面は相手のペナルティエリアに飛び出していく動きはできて、あとは決めるだけでした。中村選手から良いクロスが上がってきたので感謝したいです。
Q、アシストも記録しました。
A、最初、ディエゴから足元にボールが入ればシュートを打とうと考えていましたが、少しボールが流れたので選択肢を変えて中を見たら小川選手が走りこんでいたので、フワッとしたボールを上げれば叩けると思っていたので、丁度いいクロスを上げられたので良かったです。
<ディエゴ オリヴェイラ選手>
Q、本日の試合を振り返ってください。
A、ここ最近、勝てない試合が続いていた中で、今日の試合は非常に大事であり、また難しい試合だと思っていましたが、勝てたことは非常によかったと思います。
Q、勝利につながった要因は何だと思いますか?
A、今まで取り組んできたサッカーを表現できたことと、細かい点を修正してうまくボールを前に運べたことが得点につながり、チームに勢いが出たことだと思います。
Q、本日の試合でJ1リーグ通算200試合出場を達成しました。
A、この200試合を迎えるまでは長い道のりでしたし、たくさんの努力をしてきました。そういった意味で200試合を達成できたことは非常に嬉しく思います。ただ、この結果に満足することなく、より記録を伸ばせるようにしていきたいと思います。
Q、今シーズンから監督が変わり、昨シーズンまでと大きく違う部分は何でしょうか?
A、選手が一人一人、個性が違うのと一緒で監督もそれぞれ考え方やスタイルが違いますが、その中でチームが融合して勝利をめざすという意味では大きく違いはないとは思っています。
Q、次節の鹿島戦に向けて一言お願いします。
A、鹿島は上位にいて、クオリティの高いチームなので難しい試合になると思いますが、今日、アウェイで勝利できた勢いをそのままに勝利したいと思います。その上で、いつもファン・サポータのみなさんの応援は大きな力になっているので、ホームでより大きな応援をもらいながら勝利を届けたいと思います。
<永井謙佑選手>
Q、なかなかゴールが奪えない試合が続いていましたが、久々に複数得点で勝利できました。
A、勝てて良かったです。ここ何試合かの反省として、チームとしての意思統一をもう一度やろうということで、ディエゴともしっかりと話をしました。結果としてこうやって3-0で勝てたし、チャンス自体もたくさん作れましたし、チームとしても成長を感じられたと思います。次の鹿島戦では、どれだけ自分たちができるのかというのにチャレンジしていきたいですね。
Q、ボールを保持するなかでシュートまで持ち込めるシーンも多く作れました。その要因はなんでしょうか。
A、これまでは、バックパスが多かったりして、逃げているわけではないんですが、ゴールを決めるためのリスクだったりチャレンジが少なかったです。そこはチームとして前向きなミスは成長につながるので、チャレンジしながらやっていこうよという話を試合前にもしていました。それが上手く結果につながったり、みんなが戦えたことが要因じゃないかなと思います。
Q、永井選手としては、テンポよくボールを回しながらスペースへ飛び出していくプレーが多かった印象です。
A、裏を狙うから足元が空いてくるし、それをみんなが誰一人さぼることなく続けてやっていました。それがないと今日の結果は生まれなかったです。誰かが裏に抜けるからそのスペースに誰かが入っていくというローテーションがすごく良かったと思います。
Q、中3日で鹿島と戦います。どのような準備をしたいですか。
A、今日のように人もボールも動いて、戦うところでしっかりと戦うというのがベースですし、このプレーを継続できるように良い準備をしたいと思います。
<安田虎士朗選手>
Q、J1リーグ初出場となりました。今日の試合を振り返ってください。
A、3-0で勝っている状況だったので(出場する)チャンスはあるかなと思って準備していました。ピッチに入ったときは多少緊張しましたけれど、自分のプレーは出すことができたかなと思っています。
Q、カップ戦の出場はこれまでありました。リーグ戦はやはり違ったものがありましたか。
A、どちらも大事な試合ですが、リーグ戦は年間を通しての戦いになり、一試合、一試合大事な試合が続くという中で、戦う姿勢がなければ出場はできないと感じていたので、気持ちを込めて臨みました。
Q、93分には相手を引き付けてシュートの場面がありました。どのようなプレーを見せようと思っていましたか。
A、ここまで、印象に残るようなプレーができていなかったので、3-0という状況の中で、自分も自分のプレーを見せてやろう、という気持ちで臨みました。あの場面は振り返ると、切り返してもっと深く切り込んでシュートができたかなと思いますが、最後はシュートで終われたことは良かったと思います。
Q、ピッチでは同世代の松木選手も躍動していました。刺激も受けましたか。
A、松木選手はこれまでも試合に出続けていたので、追いかけるではないですが、多少そういう気持ちを持って、今日が第一歩なので次につなげられたらと思っています。
Q、この先、長いリーグ戦でどの様なプレーをファン・サポーターの方へ見せていきたいですか。
A、自分は起点を作るプレーが特徴だと思うので、そのプレーと得点だったりアシストだったり結果を残していきたいと思います。これから波に乗ってどんどん前に進んで勝点3を積み上げていきますので応援よろしくお願いします。