<マッチレビュー>
代表活動期間により3週間のインターバルが入ったJ1リーグがいよいよ再開する。今節は年間で34試合戦うシーズンの折り返しとなる、前半戦の最後の一戦。アウェイの地で湘南ベルマーレと対戦した。湘南とは今シーズン、すでにルヴァンカップで2度対戦。1勝1敗のイーブンの戦績。ただし、若手選手を積極的に活用したルヴァンカップとは違い、リーグ戦はベストメンバーで戦う。怪我人もほとんど戻ってきて、U-21日本代表の海外遠征に参加している松木玖生選手以外はほぼベストメンバーが揃った状態でこの一戦に臨んだ。
東京のメンバー構成は、中断前の前節鹿島アントラーズ戦がベース。代表活動から戻ったばかりの長友佑都選手が休養をとり、中村帆高選手が右サイドバックに入った。また松木選手がいないインサイドハーフは、渡邊凌磨選手と安部柊斗選手を並べた。怪我から復帰したエンリケ トレヴィザン選手とレアンドロ選手もベンチ入り。代表活動の影響はあるものの、アルベル監督は現状のベストな選択として今日の11人を選考した。
キックオフ後、試合が進むにつれて雨が強くなる難しいコンディションの中、お互いに前線からのプレスと中盤の連動したボールサイドへのスライドでボール保持を遮断し合うような展開。序盤こそ東京がショートパスとミドルレンジのパスを使い分けて湘南を押し下げてゴールまで迫ったが、シュートまで持ち込むことができない。逆に前半12分にはペナルティエリア内に選手が引き寄せられて、マイナス方向のパスからミドルレンジのシュートをフリーで撃たれる。前半14分には中盤でのボールロストからきわどいシュートを打たれるなど湘南にゴールに迫られる。そして前半26分、相手のハンドを主張してボールウォッチャーになったところでディフェンスラインの背後に浮き球のパスを通されると、池田昌生選手にヤクブ スウォビィク選手の頭上を抜くループシュートを決められて先制を許す。湘南が割り切って自陣のスペースを埋めるようになったことから、東京はなかなか攻め手を見いだせない時間が続く。永井謙佑選手、アダイウトン選手のスピードも生かそうにも背後のスペースがなく難しい。ボールを動かしながら攻め手を探す中でミスから逆襲を食らい、カウンターで押し戻される場面を繰り返す形で前半を終えた。
反撃に出たい東京は後半5分、小川諒也選手のサイドチェンジを受けた永井選手が仕掛け、ゴール前にクロスボールを入れると、飛び込んできたアダイウトン選手がヘディングシュートを放つ。これは枠をとらえられなかったが、前半に狭いエリアを打開できなかった中で、ワイドな展開からシンプルな攻撃でチャンスを作り出した。しかし、その後はなかなかシュートを打つ場面までボールを運ぶことができず、後半14分には一気に3枚の交代カードを切る。中村選手に代えてバングーナガンデ佳史扶選手を、青木拓矢選手に代えて東慶悟選手を、永井選手に代えてレアンドロ選手を投入。直後は、交代で入った選手がボールに絡み、相手ゴールに迫る場面を作るなど、変化の兆しは見えた。右サイドではレアンドロ選手が、左サイドでは佳史扶選手が高い位置でボールを持って仕掛け、ゴール前に鋭いボールを入れる。しかし、主導権を奪う前に、後半25分にコーナーキックから決められ、ビハインドを広げられてしまった。
勢いを落とさずに反撃を続けた東京は後半31分、ロングフィードにアダイウトン選手が抜け出して湘南ゴールに迫るが、シュートは相手ゴールキーパーの好守に阻まれる。後半39分には、交代出場した紺野和也選手がアーリークロスをゴール前に入れると、またもアダイウトン選手が飛び込んでヘディングシュートを放つが、ゴールキーパーの正面に収まる。大きくサイドを変えながら攻め込む東京。後半41分には左サイドの深い位置で佳史扶選手がボールを受けると、ゴール正面に飛び込んできたディエゴ オリヴェイラ選手にピンポイントの速いボールを送る。ディエゴ選手はワンタッチで合わせたが、これもゴールの上へと逸れた。後半45+5分にも左サイドを起点に相手ペナルティエリア内に多くの選手が入る場面を作るが、ゴール目前のニアサイドで木本恭生選手が合わせたボールもゴールをとらえられず。
終盤にかけて猛攻を仕掛けたものの、反撃できずに前半戦のラストマッチは悔しい敗戦となった。中3日で天皇杯3回戦をV・ファーレン長崎と戦い、さらに中3日でJ1リーグの後半戦の初戦、サガン鳥栖との一戦に向かう。
[アルベル監督インタビュー]
Q、試合を振り返ってください。
A、まずは今日の対戦相手である湘南を称えたいと思います。雨が降る中でキックオフしましたが、スタートから勝利にこだわる姿勢を見せなければいけない状況で、我々以上に湘南のほうがこの試合に勝つ姿勢を見せていたと思います。
前半を通じて、特に最初の20分間は良いプレーができていませんでした。インテンシティ、特に守備の強度のところが我々が期待しているレベルにはありませんでした。その中から相手にチャンスを作らせてしまいました。そこで失点してしまったことが、その後の流れに大きく影響を及ぼしてしまったと思います。
その後、湘南はしっかりと守備を固めてきました。そのため、後半の早い段階で3人の交代を行い、より狭いスペースでプレーできる攻撃的な選手を投入しました。後半は改善が見られたと思います。ただ、コーナーキックから追加点を奪われてしまい、さらに難しい試合展開になってしまいました。
今シーズン、J1リーグはとても拮抗したリーグだと思います。少しでもインテンシティで相手に上回られると、今日のような結果が起こりうるのが今シーズンのJ1リーグです。
サッカーの質では良いプレーができていた時間帯もありました。けれども、我々の特徴のひとつであるインテンシティ、守備の激しさというのがしっかりと表現できていなかった試合だと思います。
今シーズン、チームは成長し続けなければいけません。メンタリティも含めてです。プレースタイルも成長が必要ですし、選手だけではなく我々スタッフも含めたクラブ全体のメンタリティを勝者のメンタリティに変えなければいけないと思います。常に上位争いに絡み続けるクラブになるには、サッカーの質の向上、メンタリティの変化のふたつが重要になってきます。来週から後半戦がはじまりますが、そのふたつをしっかりと成長させていきたいと思います。
プレースタイルは徐々に成長しています。その部分についてはとても満足しています。さらに勝者のメンタリティの部分も安定させて、勝負にこだわるメンタリティを表現できるように成長していきたいと思います。今の順位で満足しているようでは上を目指すことはできません。常に上位にいることにこだわるような、勝者のメンタリティを持たなければいけません。選手たちにも伝えましたが、私も含めて矛先を自分に向けて、今日の試合を反省しなければいけません。今シーズン、このクラブにベースとなるスタイルと勝者のメンタリティを定着させるためにも、今日の試合から学ばなければいけません。
Q、判定に苛立ったようなシーンも見受けられました。
A、映像は見ていませんが、ハンドをアピールしたシーンについてはVARのチェックの結果、そうではないという判断がなされたということはそういうことでしょう。今日の試合においてレフェリーが結果に影響を及ぼしたとは思いません。今日の試合結果については、自分たちにベクトルを向けるべきだと思います。相手が激しく戦ってきているのであれば、我々は同等、もしくはそれ以上の戦う姿勢を見せなければいけません。
私がイエローカードを受けたシーンですが、ボールが外に出て、副審は外に出たと旗を上げていました。ただ、ボールがカーブしてピッチの中に戻ったという展開がありました。決して重要ではないアクションでした。
Q、湘南とのプレースタイルの相性が結果に関係していますか。
A、サッカーというのはとてもシンプルだと思います。少なくとも相手と同等のインテンシティで戦わなければいけません。システムやプレースタイルはさておき、まずはインテンシティが同等以上でなければ戦いになりません。同等のインテンシティを表現しているのであれば、システムなどサッカーに関する駆け引きなどの話ができますが、今日はそのような展開ではありませんでした。将来成功を収めるためには、このふたつを成長させなければいけません。
我々のチームはこれまで勝者のメンタリティを表現してきましたが、それを安定して表現できているというと、まだ不安定な状況です。ときにはインテンシティの高いプレーをして、最後の部分で試合に負けるという展開もあったと思います。今日の試合に関しては、インテンシティが足りない状況で負けたと私は分析しています。雨の影響もあったのかもしれません。いずれによせ、今日私たちは適切な形で戦えていなかったと思います。
[選手インタビュー]
<小川諒也選手>
Q、今日の試合を振り返ってください。
A、自分たちのミスが多くて、なかなかテンポがあがらないとこういう試合になり、ディフェンスラインも上げられなかったです。攻撃面でもノーゴールで終わってしまったので、この試合を教訓にして次の試合に生かさないといけません。
Q、自分たちらしさを表現できなかった要因はどこにありますか。
A、ボールを奪ってからのつなぎの部分で、いつもであればズレないところでパスがズレてしまって、またすぐ相手ボールになって守備の時間が増えてしまい、どんどん自分たちで疲弊していってしまいました。相手のやりたい形にさせてしまったと感じています。
Q、アルベル監督が就任してシーズン前半戦が今日の試合で終わりました。今日は敗れてしまいましたが、ここまでの積み上げや手応えはいかがですか。
A、確実に成長している部分はあると思いますし、すべてが良い試合だったとは言えませんが、内容が良い試合もあれば、今日のようにまだまだな試合もありました。今シーズンは、監督も積み上げるシーズンだと言っているので、ここは我慢して続ける必要があります。非常に悔しい気持ちはありますが、自分たちがやりたいことはブレずに続けていかなければいけません。
Q、ご自身にとってはFC東京でのリーグ戦の試合も少なくなりました。
A、まだあまり実感がないですが、味スタでの試合も終わってみんなの前でスピーチもさせてもらって、海外に挑戦するという覚悟は固まっています。あとはFC東京でリーグ戦としては次が最後の1試合になるので、しっかりと勝ちたいです。
Q、その最後の試合に向けて、どういったプレーを見せたいですか。
A、鳥栖はすごくアグレッシブに来るチームですし、自分たちにとって対戦成績が良くないチームです。自分たちのサッカーで、その鳥栖のサッカーをいなして、マイボールの時間を増やして内容も納得するような形で勝ちたいと思います。できれば得点やアシストで恩返しをしたいですが、それ以上に自分がFC東京で7シーズン半プレーしてきた想いというのを、チームを勝たせるということで表現したいです。
<安部柊斗選手>
Q、ボールを保持するなかでフィニッシュまで持ち込むことが難しかったように感じました。
A、簡単なミスが多かったと思います。ボールを失ってからカウンターを受けるシーンもありました。そこが結果に直結してしまったと思います。
Q、試合のない期間がありましたが、ボールが足につかない感覚でしたか。
A、チーム全体として体が重そうでしたし、あまり動けていないなと思っていました。試合に入る準備として、もっとアップからしっかり取り組んでいかないと体のキレも出てこないですし、こういった試合展開になってしまうと思うので、次はしっかり意識していきたいです。
Q、相手はルヴァンカップに負けてからかなり準備をしてきたとの事でしたが、意気込みの高さや修正してきたと感じた部分はありましたか。
A、単純に、相手のほうが今日の試合にかける気持ちが強かったと思います。局面の球際の部分で負けてしまっていたので、そこで勝てないと試合の結果に出てきてしまいます。本当に単純な部分で負けてしまって、相手が気持ちでも勝っていました。
<紺野和也選手>
Q、ベンチから試合を見てどう感じていましたか。
A、前半からなかなか自分たちのペースを掴むことができず苦しんでいたと感じました。それでも、相手は後半に(運動量が)落ちてくると思っていたので、その状態で自分がピッチに入った時に何ができるかということを考えて見ていました。
Q、選手交代で流れが変わったように感じましたが、得点を奪うことはできませんでした。
A、自分たちの流れは作れていたと思うし、チャンスも多く作れていたと思います。ただ、ゴールを取れなければ何の意味もないので、最後の部分の擦り合せが必要だと感じました。そこを次の試合に向けて少しでも積み上げられるようにしたいです。
Q、今日の試合でリーグ戦は折返しとなりました。後半戦に向けて意気込みをお願いします。
A、全員、今の順位には満足していません。ここからこういった試合をしないように練習から積み上げて、上に上がっていきたいと思います。
<永井謙佑選手>
Q、試合を振り返ってみていかがでしたか。
A、イージーミスが多く、ボールの取られ方が悪かったです。それにより、後ろの負担も大きくなったと感じています。これからやらなくてはいけないこと、改善点は多くあると感じています。
Q、上手くいかなかった点は具体的にどの点だと感じていますか。
A、全体を通して、流れが来そうなところで自分たちがミスをして、流れを持ってこれなかった中で失点をしてしまいました。前半の終わりは押し込んだ時間もありましたが、そこでクロスだったりシュートだったりが少なく、その数を増やしていかないと点は取れることができないと感じましたし、そこに人数をかけれるように、またミスをなくしていけるように取り組んでいきたいです。
<森重真人選手>
Q、試合を振り返ってください。
A、試合を通してボールを失う回数が多かったです。自分たちで自分たちの体力を削ってしまいました。
Q、追いかける展開でしたが、逆転に向けてチームとして何を意識してプレーしていましたか。
A、相手陣地に押し込んでいければ良いのですが、その前にボールを奪われてしまいました。その結果、後ろの選手も守る範囲が広くなってしまいました。ビルドアップでのミスが今日のすべてだったと思います。
Q、次の試合に向けてどんな準備をしていきますか。
A、プレーの精度を上げていくしかないと思います。ボールを保持しながらゴールをめざすサッカーをしているので、ゴールに向かう前に簡単なミスでボールを奪われてしまうと体力も厳しくなってきます。今日は自分たちで自分たちの首を絞めてしまうことになり、それが結果に繋がってしまったと個人的には思います。