1/25トレーニング
沖縄・糸満キャンプ初日は、非公開での進行となった。この日から二次キャンプがスタートし、松橋力蔵監督は「ゲームに向けた準備と、そのゲームのなかから出てくる課題や良い部分をどんどん出していきたい」と語った。
さらに、指揮官は「驚きやサプライズを起こす選手が現れることを期待している」と言葉にしていた。
昨シーズンの主力や期待の新加入だけでなく、武者修行先で思うような成果を上げられずに東京に帰ってきた選手もこれに奮起。自身の武器や力を誇示するように、それぞれが良さを発揮しつつある。
過去の序列や実績を覆す選手たちの出現で、さらに競争力を高める。二次キャンプがそうした驚きにあふれれば、特定の誰かに頼らなくてもいい分厚い選手層を手に入れることができるはずだ。
FOCUS ON
オフィシャルカメラマンがセレクトするキャンプ写真企画「FOCUS ON」。沖縄・糸満キャンプ初日は通訳の飯野一徳とエヴェルトン ガウディーノ選手が笑顔で話す、この一枚を選んだ。2000年より外国籍選手、スタッフの通訳として公私ともに支えてきた。昨シーズン限りで現役を引退したディエゴ オリヴェイラ選手との別れも経験。それでも飯野通訳は「寂しいですけど、今は世界中どこにいても携帯電話で顔を見てしゃべれるようになりましたから」と言い、涙を笑顔に変えて今いる選手たちと向き合い続けている。もちろん青赤の歴史を彩ってきた選手たちとの絆はこれからも変わらない。
CAMP VOICE vol.12 西堂久俊選手
松橋力蔵監督は二次キャンプを前に「サプライズを起こす選手が現れることを期待したい」と言った。それを知ってか知らずか、西堂久俊選手は自然と「周りを驚かせたい」と口にした。プロ1年目のシーズン途中からジェフユナイテッド市原・千葉、鹿児島ユナイテッドFC、FC岐阜と渡り歩いた。だが、思うような活躍ができず、3シーズン目を迎えて「追い込まれている」と危機感を言葉にした。一方で、今キャンプは何かを吹っ切ったように笑顔が目立つ。ミスを恐れぬ大胆なプレーも見せている。その理由を西堂選手に聞いた。
Q、二次キャンプがスタートしました。
A、ずっと怪我に悩まされてきたので、一次キャンプを通じて怪我なく良い練習を詰めたことは相当大きいです。そのなかで、これまでとは違うポジションにも挑戦していますし、そんな環境も楽しめています。僕自身は追い込まれている状況にあると思っています。それでも、ネガティブな気持ちは一切なく、「何でもこい」の気持ちで取り組めています。そうした感情が良い方向に働いていて、一次キャンプを振り返っても、気持ちがやっぱり大事だと思いました。サッカーはメンタルのスポーツですし、気持ちを出すことがピッチ上で僕自身を表現することにつながっていくと思っています。
Q、練習から良いプレーを見せてきました。ここから序列を覆すにはどうすべきだと考えていますか。
A、今シーズンは初めての感覚というか、キャンプを楽しめています。昨シーズンまでは同じポジションの選手の活躍がついつい気になり、つい負の感情が湧いてきてしまっていました。でも、ここには同じポジションに素晴らしい選手たちがいて、激しい競争があります。でも、そうした状況はどのクラブ、チームにもあって、どこにいたとしても競争に勝ち続けていかないといけません。ずっと分かってきたつもりでしたが、こうして追い込まれてみて、本当の意味で理解できたのかもしれないです。そういう心の持ち方で、今は激しい競争さえも楽しめています。
Q、松橋監督も率先して自分がチームのためにできることをやっていこうと話していました。
A、松橋監督の言葉が、僕自身の思考に少なからず影響を与えています。そういう環境を監督として作り出してくれている。僕だけがそう感じているのかもしれないし、他の人も色々な感じ方をしていると思います。それに監督は攻撃的な選手を求めていると思っていて、僕自身も攻撃は好きなので特長を出すだけだと頭のなかをクリアにして取り組めています。
Q、無理をせず一度やり直しても良い場面で、大胆に前を向いて相手ディフェンダーの意表を突くように間を割って入るようなプレーもキャンプ中にはありました。
A、疲労や張りはもちろんあります。でも、コンディションはプロ3シーズン目で一番良いです。プロ1シーズン目のキャンプはリハビリスタートでしたし、昨シーズンは痛みを抱えながら取り組んでいました。今が一番良い状態ですし、積極的なプレーや自信にもつながっていると思います。
Q、外から見ていても、毎日が楽しそうです。
A、スタイルが合っていると思います。それにそこまで制約がないのもあると思います。松橋監督は方向性や考え方をミーティングでは伝えてくれますが、絶対にこうしなきゃいけないとか、こういう時は必ずこう、ということがないので、それは僕みたいに流れのなかで、勢いを持ってプレーするタイプの選手にとっては大きいです。制約が少ないことで、すごく前向きに取り組めていると思います。
Q、最後に残りのキャンプでは、どういった日々を過ごしていきたいですか。
A、僕のなかに常にあるのは、怪我をしないことです。それが懸念点なので、トレーナーのみなさんの力を借りながら怪我を未然に防いでいきたいです。期限付き移籍先で結果も残せずに帰ってきた選手ですが、下から食らいついていきたいです。もちろんみんなが開幕スタメンを狙っていますが、僕も一差しを狙って、周りを驚かせたいです。そういう取り組みをして開幕スタメンをめざします。
Text by 馬場康平(フリーライター)