いよいよ新シーズンの開幕が迫ってきた。松橋力蔵新監督に率いられる青赤軍団は、2月15日(土)にアウェイで横浜FCとの一戦に臨む。各選手が開幕戦に並々ならぬ覚悟で臨むなか、このゲームに人一倍の闘志を燃やしている男がいる。マルセロ ヒアン、22歳。サガン鳥栖から新しく青赤の一員となったストライカーは、偉大なる先人の“後継者”として期待を集め、クラブに栄光をもたらして自身の存在価値を高めるために覚悟のシーズンを迎える。「モチベーションは非常に高い。良いシーズンにできる自信がある」と前を向く彼が「重要」だと位置付ける開幕戦と、新たなシーズンへの熱い想いを聞いた。
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──いよいよ2025明治安田J1リーグが開幕します。初戦を控えたこの時期はやはり高揚するものですか。
個人的には対戦相手が古巣の横浜FCということもありますし、東京に移籍してきて初めてのゲームになるので、絶対に結果を出したい。誰もが開幕戦に向けて同じような想いを持っているでしょうし、簡単な試合にはならないと思っています。試合直前まで全員で良い練習を積んで、2025シーズンを勝利でスタートしたい。ファン・サポーターのみなさんのためにも、自分のためにも、モチベーションは非常に高いです。
──チーム始動から約1か月、松橋力蔵新監督が志向する戦い方への適応は進んでいますか。
順調だと思います。個人的には東京のメンバーとして戦えるということがとても嬉しいですし、早く公式戦のピッチに立ちたいという気持ちが率直な心境です。この1か月間、沖縄キャンプを中心にトレーニングを積み、新しい監督の下で良い準備ができています。良い形で開幕戦に臨み、2025年を素晴らしいシーズンにできればと思っています。
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──松橋力蔵監督が掲げるボールを大事にしながら攻めるサッカーは、前所属のサガン鳥栖でやっていたスタイルに通じるものがあると思います。
確かに鳥栖のサッカースタイルと似ている部分はありますね。ボールを大事にするところは近いと思いますが、パスをつないでボールを握りつつ、場合によってはロングボールも併用します。自分にとっては東京のスタイルのほうがより合っていると感じています。
──ボールを正確に扱うこと。良い判断から精度の高いパスを送ること。松橋監督が選手たちに求めるものには、技術へのこだわりがあります。
それはとても大切だと思っています。先ほどから話に出ているように、ボールを大事にして主導権を握るためには技術が必要です。チーム始動から1か月が経ち、良い連携ができはじめていると思います。ただ、もちろんまだ100パーセントではありません。ピッチ内でもっと素早く判断してプレーを連動させていきたいです。
──松橋監督はパスをつなぐことが目的ではなく、ゴールが最優先であることを強調しています。
やはりサッカーは点をとらなければ勝てない競技なので、それはチーム全員が強く意識しているところですし、勝つためにはゴールを最優先に考える必要があります。もちろんボールを握ることは大切です。ただ、そこを大事にするだけではなく、相手にスペースを空けさせることを考えながらボールを握り、狙うべきスペースが空いた瞬間に積極的に仕掛ける姿勢が必要になります。
──こういったボールを保持する戦い方をめざす場合、フィニッシュに至る前の段階でどういう仕事が必要になると考えていますか。
私たちフォワードにボールが来る頻度はそんなに多くないので、スペースの生まれそうな場所を常に探して予測や察知をしながら、そこへ飛び込んでフィニッシュに関われるような準備を大切にしています。選手個々に色々なプレースタイルがあって、中盤でボールを呼び込もうとするタイプもいます。そういった選手と比べたら前線で張っていることが多いかもしれません。そのほうがゴールに近く、得点の可能性が上がりますから。前方でのポストプレーからボールをキープしたり、サイドへ展開をしたりすることもある一方で、鋭く前線へ抜け出すプレースタイルが自分のもっとも得意とするプレーです。裏のスペースを突くスピードが最大のストロングポイントだと考えています。
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──鳥栖で決めた昨シーズンの14ゴールは得点パターンが豊富でした。
昨シーズンは色々なバリエーションのゴールを決めることができました。まさにその要因が、できるだけゴールの近くにいたことだと思っています。裏に抜けるパターン以外にもケースバイケースで、フィニッシュに関係できるポジションにいれば、自然と多くのバリエーションが生まれますし、チームメイトがもたらしてくれるチャンスがゴールにつながっていると思っています。
──シュート技術もさることながら、シュートを打ちやすい状態にしていくことに長けているという印象です。
個人的にゴールの可能性が一番高いのは、裏のスペースに抜け出してワンタッチシュートを打つ形です。それがもっともゴールに近いと思います。ですが、そんなに理想どおりの形にはさせてもらえないのが現実です(笑)。狙いたいスペースの周りにポジションをとりながら相手を抑えてボールをキープしたり、そこからボールを持ち運んでシュートを狙ったり、状況に応じて色々なやり方を考えています。
──周囲とのコンビネーションはいかがですか。
この1か月の準備期間で深まってきているとは思うので、あとは試合を重ねることで熟成させていきたいですね。やはり一番大切なのは、コミュニケーションです。当然ながら全員とすべての“目線”が一致することはないので、ちゃんと周りと話し合って、自分がしたかったプレー、チームメイトがしてほしかったプレーをすり合わせることで、徐々にアジャストしていくものだと思っています。ピッチの外でもみんなと仲良く交流もしていますので、自分としては2025シーズンがとても良いシーズンになるという自信もあります。
──冒頭にも話に出ましたが、開幕戦はJリーグで最初に在籍した横浜FCとの対戦になります。どのような想いがありますか。
一緒にプレーしていたブラジル出身のカプリーニ選手やガブリエウ選手といった何人かは移籍してしまいましたが、かつての仲間が多く所属していますし、個人的には日本で初めてプレーしたクラブなので思い入れはあります。彼らもホーム開幕戦で気持ちの入った試合を見せてくると思いますし、簡単な試合にはならないでしょう。でも、今は東京で青赤を身にまとってプレーしています。自分にとっては東京での初戦。絶対に勝って、良いスタートを切りたいと思います。
──昨シーズン限りで現役を引退したディエゴ オリヴェイラさんの後継者になってほしいという期待も感じていると思います。
私が東京へ移籍することになった際、クラブから「ディエゴの後継者になる存在を求めている」という話を聞いていました。ファン・サポーターのみなさんも同じような期待を持たれているでしょうし、もちろん自分としてもその認識は持っています。ですが、彼は東京というクラブ、チームに多大なる貢献をした素晴らしい選手です。その輝かしい実績にすぐに届くわけではありませんが、みなさんの期待をポジティブに受け取って、自分のパワーに変えていきたいと思っています。
──良いシーズンになることを願っています。
自分にとっては特別なシーズンになると信じています。今までは若さを武器にガムシャラにやってきましたが、その域を超えて結果を出さなければならない立場になってきたと感じています。来日当初は出場機会が少なく、とても悔しい時間を過ごしましたが、それでも自分の力をずっと信じ続けて、ようやく「マルセロ ヒアン」という名前をみなさんに知ってもらえるようになってきました。東京で昨シーズン以上の結果を出して、本当にディエゴさんみたいに愛されて必要とされる選手になっていきたい。そして東京のリーグ初優勝にエースとして名を刻みたい。そのためにも開幕戦は絶対に勝ちたいと思っています。
Text by 後藤 勝(フリーランスライター)
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