<前節・鹿島アントラーズ戦のレビュー>
「非常に悔しいです」。試合後の記者会見、松橋力蔵監督は同じ言葉を二度口にした。一度は会見冒頭に率直な感想として、そしてもう一度は試合総括を終えた締めのフレーズとして。それだけ悔しいという感情が心を占めたのだろう。

開幕から2勝1敗と白星先行で臨んだアウェイでのゲーム。鋭いカウンターを武器に立ち上がりから何度もチャンスを作った。中盤でボランチの高宇洋選手、移籍後初スタメンの橋本拳人選手が積極的に顔を出して最終ラインからのパスを受け、ボールを大事にしながら攻撃を構築していく場面も少なくなかった。
だが、フィニッシュだけが決まらない。仲川輝人選手のシュートはクロスバーをかすめ、マルセロ ヒアン選手のヘディングはゴールポストを叩いた。高い位置での連動したプレスから無人のゴールへ流し込もうとした俵積田晃太選手のシュートはわずかにゴール右へ外れた。選手個々が持ち味を発揮し、良い形でチャンスを作りながら、数多く訪れた先制のチャンスを逃し続けてしまう。

ことごとく決定機を決められない東京は後半、セットプレーから鹿島に2点を奪われる。後半38分、FC東京U-18所属の北原槙選手が15歳7か月22日という若さでピッチに送り込まれ、J1リーグ史上最年少出場記録を更新するニュースはあったが、アウェイで悔しい敗戦を喫する結果となってしまった。
<試合プレビュー>
ここまで2勝2敗の五分。首位まで勝点4差の青赤軍団が、ホームで湘南ベルマーレを迎え撃つ。
前節の鹿島アントラーズ戦は松橋力蔵監督が「決めるところさえ決めていたら、結果が変わっていた可能性がある」と話すほど多くのチャンスを作り、それを逃したことで流れを失って悔しい敗戦を喫した。週明けのチームミーティング、普段は戦略的な振り返りを行う場で指揮官がフォーカスしたのは、しっかりと決め切ること。松橋監督は「内容にこだわることももちろん大事ですし、後ろから積み上げる土台のところから取り組んできましたが、今回はどうやって結果を出すか、自分たちの勝利に結びつけるかにフォーカスしました。まずはそこが大事だと。上に行きたかったら、これをしっかり決めよう」とアプローチした。
スピードのある攻撃はできている。ゴールキーパーも加わりながらのビルドアップも危ういシーンはありながら形になるケースが増えてきた。個の力で局面を打開してチャンスを作れることは開幕からの4試合で証明済みだ。だからこそ今節はゴールと勝利にこだわった試合が求められる。

ただし、今節対戦する湘南ベルマーレは開幕から3勝1分、勝点10の2位。得失点差で首位の座は譲ったが、山口智監督が「Jリーグでも一番」と胸を張る組織力でスタートダッシュに成功した難敵だ。従来の武器だったハードワークに加え、3-1-4-2のシステムから2トップ2シャドーに両ウイングが押し込む攻撃的なスタイルで試合の主導権を握って結果を出している。特に2トップの福田翔生、鈴木章斗の両選手はここまで二人で計5ゴールと絶好調。まずはここをどう封じ込めるかが一つのポイントになりそうだ。
東京が開幕から3試合連続で対戦してきた3-4-2-1システムのチームとは異なり、完全なるミラーゲームにはならないことが予想される。攻撃では相手のアンカーの両脇をどう使えるか、守備では前線に人数をかけてくる相手の圧力とインサイドハーフをどう抑えるかも試合展開のカギになるだろう。
前節の悔しい思いをバネに、フィニッシュにこだわって勝点3を積み上げられるか。ここでしっかり勝利して上位争いに食らいつき、結果を出しながら“力蔵トーキョー”のサッカーを洗練させていきたいところ。何としてもホーム味の素スタジアムで湘南をしっかりと叩かなければならないゲームとなる。
[松橋力蔵監督 インタビュー]

Q、前節の試合から好調を維持している湘南ベルマーレ戦に向けてどのような準備をおこないましたか。
A、湘南は好調を維持しているチームなので、しっかりと勝利したいと思っています。前節も、試合結果だけを見てしまうとただの負けですが、シンプルに決めるところさえ決めていれば結果はもしかしたら変わっていた可能性もありました。ただ、そこも踏まえて、上に行きたいのであれば、しっかり決めていかないといけないと思います。湘南戦も同じだと思います。やはり自分たちが作り上げたチャンスをしっかり決め切るということが大事です。
Q、湘南の印象を教えてください。
A、昨シーズンなどでも勝負強さなどを身につけながら、そのなかでブラッシュアップを図りながら取り組んでいたものが、血となり肉となりチームとしてとても完成度が高くなってきているなという印象があります。選手が自信を持ってプレーしているように見えています。それぞれの良さが存分に発揮されているように思います。そこにプラスして安定感や、チームとしてやりたいことの再現性も高くなっています。なので、そこで自由にやらせないように、個々の対面で負けないことが試合結果を左右することになると思います。
Q、ボールを保持して相手陣内に押し込んでいる時間も長くなってきました。その状態を長くすることが理想でしょうか。
A、湘南戦については、それをすることで相手の良さも出させてしまう部分は当然あります。湘南はボールを奪ってからのカウンターが非常に鋭いです。それを出させないために持たせる場面もどこかで必要になってくると思います。自分たちが良い状態の時に、手を替え品を替える。その駆け引きが大事だと思っています。もちろん、チームとしてはしっかりボールを握って、そのなかで相手を崩して点をとることをやっていきたいです。相手に持たれている時間があるかもしれませんが、そこは逆に裏を返してカウンターで仕留める。お互い同じような狙いはあるかもしれないので、その精度を高めることが大事だと思います。
[選手インタビュー]
<高宇洋選手>

Q、前節の振り返りをお願いします。
A、決めるべきシーンでしっかりと得点を決め切ることができれば、試合結果も変わっていた試合でした。前半含めてピッチ上で良い手応えを感じていましたし、ボールの回収やチャンス回数も開幕戦から増えてきています。チームとしての積み重ねを感じていますし、継続してレベルアップしていきたいです。松橋力蔵監督から話もありましたが、チャンスで決め切らなければ上位に食い込むことはできません。よりこだわって湘南ベルマーレ戦もプレーしていきたいです。
Q、攻守においてボランチの立ち位置も徐々に修正されているように見えます。
A、前節は相手が4-4-2のシステムで、必然的にズレが生まれていました。僕らボランチがディフェンスラインに下がらなくても、相手のフォワード二枚に対してディフェンス三枚と数的有利の状況でしたので、下がって受けることをあえて我慢し、真ん中でボールを受けることを意識しました。今節は湘南が相手ですし、相手のシステムももちろん変わってくるので、ピッチ上でうまくズレを生み出したいと思います。橋本拳人選手とは練習も練習試合でもボランチを組んだことがありませんでしたが、ピッチ上でコミュニケーションをとりつつ、良い関係でプレーできました。お互いの良さを今後も引き出し合えればと思います。
Q、今節はリーグ開幕から好調の湘南と対戦です。
A、素晴らしいチームですし、昨シーズンから湘南が自分たちのスタイルを貫いて自信を持ってプレーする一体感を対戦した時からとても感じていました。昨シーズンのホームゲームでは負けていますし、その借りをしっかりと返したいです。僕らとしても、ここで勝点3を積み重ねて上位に食い込みたいですし、ホームで連敗は許されないと思っています。
<土肥幹太選手>

Q、試合出場はありませんでしたが、前節の試合をベンチからどのように見ていましたか。
A、チームとしてチャンスを作るシーンは多くありましたが、決め切れずに終盤に失点をしてしまいました。ディフェンダー目線で言えば、チャンスを作る起点となること、その回数を増やすこと、そして無失点で試合を運ぶことが必要だと思います。ゼロに抑えることにもっとこだわりをもってプレーできればと思っています。
Q、湘南ベルマーレの印象を教えてください。
A、調子の良さを感じますし、前線の福田選手、鈴木(章斗)選手が攻撃の起点となって生まれた得点も多くあります。チームとして自由にプレーさせないこと、マークの受け渡しを含め、相手のサイド攻撃に対するケアをピッチ上で声を掛け合いながら柔軟に対応したいと思います。
Q、今週はチームとしてどのような準備をしてきましたか。
A、相手はボールの運び方や連動性に長けているので、その組み立てに対する守備の立ち位置や受け渡しなど、チームとして合わせるべきポイントを整理しました。前節はセットプレーの流れから失点してしまいました。チームミーティングを通して確認と修正はできている手応えもあります。守備面の強度の高さをチームとして武器にしていくためにも、湘南戦は高い意識を持って臨みたいと思います。



