<マッチレビュー>
味の素スタジアムに戻って清水エスパルスを迎え撃つ明治安田J1リーグ第13節。前節、国立競技場で行われたガンバ大阪戦は試合終盤に怒涛の3ゴールを奪って第3節以来9試合ぶりとなる勝利を手にしており、ホームで連勝を収めて勢いに乗りたい東京。球際の戦いで負けないというサッカーの原点に立ち返りつつ、良い守備から良い攻撃へと転じながらゴールから逆算したプレーを見せていきたい。
前節から中3日での連戦となる東京は、スターティングイレブンを4名変更。右ウイングバックに白井康介選手が入り、ボランチは高宇洋選手と橋本拳人選手のコンビ。右インサイドハーフには仲川輝人選手を起用した。そして過密日程のなかでも公式戦4試合連続スタメン出場を果たしている北原槙選手には、J1最年少得点記録の更新に期待したいところ。また、前節で途中出場から圧倒的な存在感を見せた俵積田晃太選手、矢印を前方に向けて迫力あるプレーを続けてきた佐藤恵允選手はベンチからスタート。いずれも勝負どころでの起用が見込まれている。
ゴールデンウィーク初日のゲームは、快晴の味の素スタジアムで13:09にキックオフを迎えた。
1stHALF—連動した攻守をみせるも前半終了間際に痛恨の失点
従来どおりの3-4-2-1システムを敷いた東京に対して、清水は負傷者もあって宇野選手をセンターバックに置いた4-2-3-1の新布陣を採用。序盤は清水の出方をうかがいながらアジャストし、攻め手を探っていくような展開が続いた。
なかなか厚みのある攻撃を生み出せない東京だったが、前半16分にシンプルな展開からビッグチャンス。右後方から白井選手が柔らかいフィードを前方に送ると、ペナルティエリア付近で相手選手が戻りながらトラップした瞬間を狙っていたマルセロ ヒアン選手が巧みに身体を入れてカットしてニアサイドを突く右足シュート。これがゴールキーパーにセーブされ、こぼれ球をさらに仲川選手が狙ったが、これも相手の好セーブで先制点とはならなかった。
前半29分にはハイプレスでカットしたボールを左サイドで北原選手が縦に運び、タメを作って中央へ送ったところに走り込んだ高選手がトラップから持ち直してシュート。これは相手ゴールキーパーの正面に飛んでしまったが、良い守備から良い攻撃への形が見られたシーンだった。
相手の守備網をどう破っていくかの工夫が求められている東京。高選手が最終ラインに落ちて土肥幹太選手が右サイドに開いたり、白井選手が右サイドバックに落ちて逆サイドの遠藤渓太選手を押し出したりしながらの可変システムで相手にズレを生じさせようとしていく。
複数の選手が積極的にボールに絡んでくる清水に押し込まれる時間帯が続いた前半44分、ペナルティエリア内で乾選手を倒してペナルティキックを献上。これを北川選手に決められ、前半アディショナルタイムに先制点を許してしまう。
前半はこのまま0-1で終了。終了間際に悔しい失点を喫し、1点のビハインドでハーフタイムを迎えた。
2ndHALF—サイド攻撃に活路を見出すも決定打に欠く
的確な立ち位置と厚みのある攻撃で相手の守備にズレを生じさせたい後半。メンバー交代なく臨んだ東京はキックオフから清水陣内に押し込み、立ち上がりから橋本選手のロングシュートで反撃の意志を見せていく。
しかし、後半も主導権を握ったのはボールを支配して攻める清水。ボールサイドに人数をかけ、複数選手が絡んだ攻撃を見せてくる。東京も最終ラインでつなぎながら攻め手を探るが、相手のコンパクトな守備に手を焼いてミドルゾーンよりも前へ運ぶことができず、単調な攻撃が目立ってしまう。
攻撃にテコ入れを図りたい東京は後半15分、仲川選手、北原選手に代えて佐藤選手、俵積田選手を投入し、インサイドハーフの2枚同時交代で状況打開を狙った。これで左サイドに動きが生まれる。左ウイングの遠藤選手が状況に応じて中央に入り込み、俵積田選手が左に開くなど流動的にポジションチェンジしながら攻撃に変化を加えていく。
後半19分には岡哲平選手のロングフィードに右サイドで抜け出した白井選手がクロス。これを中央でヒアン選手が頭で合わせる決定機を迎えたが、インパクトが浅くなって惜しくもゴール左に外れてしまう。その後も岡選手のハーフボレーなど東京の時間が続いたが、ネットは揺らせず。少しずつ清水がリズムを取り戻してポゼッションするシーンが増えていく。
前節でスーパーゴールを決めている俵積田選手が左サイドから仕掛けようとするが、相手が縦横ともにドリブルのコースを切ってくる対応。それでも強引にこじ開けてゴールライン付近まで持ち上がってクロスを上げるなど、チャンスに絡むべく懸命のトライをしていく。
後半32分には安斎選手、橋本選手から木村誠二選手、東慶悟選手にスイッチ。3バックの中央に木村選手を置く並びに変更した。
しかし交代直後の同34分、カウンターから乾選手にドリブルを許し、そのままペナルティエリア内まで持ち込まれてシュートを決められ失点。反撃の勢いを強めたいタイミングで痛恨の追加点を奪われてしまう。
後半43分には白井選手に代わって小泉慶選手がピッチへ。そのまま右ウイングに入ったチームキャプテンは、高い位置をキープしてクロスを供給するなど攻撃的な姿勢を見せる。だが、重心を後方に置いて守りを固める清水守備陣に手を焼き、チームとしてなかなか決定機を生み出すことができない。
5分間と表示された後半アディショナルタイムも試合を動かすことはできず、このまま0-2で敗戦。味の素スタジアムに詰めかけた青赤のファン・サポーターに前節に続く勝利をプレゼントすることはできず、悔しい完封負けを喫した。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK 野澤大志ブランドン
DF 安斎颯馬(後半32分:木村誠二)/岡哲平/土肥幹太/白井康介(後半43分:小泉慶)
MF 高宇洋/橋本拳人(後半32分:東慶悟)/遠藤渓太/北原槙(後半15分:俵積田晃太)
FW マルセロ ヒアン/仲川輝人(後半15分:佐藤恵允)
SUBS
GK 波多野豪
DF 木本恭生
MF 常盤亨太
FW 野澤零温
MANAGER
松橋力蔵
GOAL
―
<清水エスパルス>
STARTING Ⅺ
GK 沖悠哉
DF 北爪健吾/高橋祐治/吉田豊(後半45+1分:羽田健人)
MF 松崎快(後半32分:中原輝)/宇野禅斗/弓場将輝/マテウス ブエノ/カピシャーバ(後半45+1分:山原怜音)
FW 北川航也(後半32分:ドウグラス タンキ)/乾貴士(後半40分:矢島慎也)
SUBS
GK 猪越優惟
DF 大畑凜生
MF 嶋本悠大
FW アフメド アフメドフ
MANAGER
秋葉忠宏
GOAL
前半45+1分:北川航也 / 後半34分:乾貴士
[松橋力蔵監督インタビュー]

Q、本日の試合を振り返ってください。
A、ゴールデンウィークということで、多くのファン・サポーターの方がスタジアムに足を運んでくださって我々をサポートしてくれたにもかかわらず、見るところが少ない非常に残念なゲームをしてしまったと思っています。今は本当に申し訳ない気持ちで一杯です。
Q、見るところが少ない試合だったというお話しですが、そうなった一番の原因はどこでしょうか。
A、数字上はもしかするとボールを握っている部分があったのかもしれませんが、攻撃の目線がほとんど合っていなかった部分が目立ったゲームだったと思います。長いボールを使うことで有効に運ぶことができればもちろんOKなんですが、そこがなかなかうまくいかないなかで、違う手法をとる部分で目線が合い辛かった、と。後半に関しては押し込むような状態ではありましたが、そこでの最後のクオリティというものも決して高くなかったことで、カウンターを食らうようなシーンもありました。
その一つひとつのプレーのなかで、ボールを握るというか時間を作ったりするところで、一人ひとりのプレーのクオリティで清水エスパルスに分があったゲームになってしまったように思います。それは我々にないわけではなく、今日はそこがしっかりと出せなかったことで見るところが少ないゲームになってしまいました。
Q、選手交代の狙いを教えてください。
A、前線はもう少しワイドでもインサイドでもしっかりと仕掛けられるプレーヤーを入れたい狙いがあるなかで、元々試合に出ていた選手もそういう特性はありつつも、次の出番を待つ選手に託したということです。ボランチとセンターバックを代えているのは、本来のポジションでプレーすべき選手を入れることによって後ろでの優位性を作ることで、前線へのスムーズな配球があったりだとか、インサイドに対してもう少し圧力をかけるような状態を作ることができればと思いました。しかし、クロス一辺倒になってしまいました。一つ惜しいシーンもありましたが、なかなかそこのクオリティを最後に発揮できなかった。あとはゴール前を固めているところで、マイナスからのミドルシュートであったり、そういう攻撃のバリエーションというか、手を変え品を変えて相手を揺さぶって、そこから仕留めるというクオリティも今日のゲームでは発揮できませんでした。
Q、選手のクオリティも高く、松橋力蔵監督がアルビレックス新潟で取り組んできたことを考えると非常にもどかしさを感じます。監督はどのように受け止めていますか。
A、仰っていただいたように、僕ももっともっとできると思っています。実際にキャンプからチームを作るなかで、そういう部分での良さも発揮できているキャンプを過ごしていたので、手応えも非常に感じていました。実際のシーズンに入ってから難しさを感じながらも、なかなか勝ちにつなげられなかった部分で、選手の勇気といいますか、そこにトライし続けるというところで目線を合わせるためにさまざまな要素に目が行き過ぎて、それぞれの選手の良さをどう生かしていくかという難しさがあります。
今シーズンから新しいシステムでやっていることもあり、そこはやはり時間が必要だと僕は思っています。この十何節で十分だと言われれば十分なのかもしれませんが、そのなかで怪我人が出たり、噛み合わせ、組み合わせでの難しさを自分自身は感じています。ただ、準備の段階では我々もできるだけクリアな情報を選手たちに提供してゲームに挑んでもらおうと思っているので、そういう部分では多少なりともできているところもあると思います。
それでも実際のゲームになった時に僕の修正能力だったり、選手の起用法だったり、適材適所で、どういうタイミングで、というところは僕が担わなくてはいけない大きな役割だと思っています。その噛み合わせが本当にガチっとはまる瞬間もこれまでもたくさんあったんですが、今はなかなかそういう部分が出ていないもどかしさで少し揺れている状態が続いているというのもあると思います。
[選手インタビュー]
<マルセロ ヒアン選手>

Q、ゴール前に顔を出す回数や味方との連動が徐々に良くなっているなかで、後はリーグ戦初ゴールが待ち望まれます。どのような課題を感じていますか。
A、この良くない状況を打開するために、日々のトレーニングから取り組んでいます。僕をはじめ前線の選手だけではなくディフェンスの選手も含めて、全体で連携してゴールをめざすプレーをさらに強化していきたいです。今日の時点で13試合が終了し、リーグ戦では長い間ゴールが奪えずに悔しいです。松橋力蔵監督をはじめ、チームとして表現したいサッカーをあらためて整理をして、ピッチに立つ全員がめざすべきサッカーにフィットした形で僕自身もリーグ戦の今シーズン初ゴールをめざしていきたいです。
Q、清水エスパルスの堅い守備に対して、攻撃に手を焼くシーンが目立ちました。
A、監督からは足元のパスだけにならず、タイミングを見てディフェンスラインの裏を突くボールや裏のスペースに走り込む動きなどを求められていました。個人としては、相手ディフェンダーの裏のスペースに飛び込む動きが少なく、求められていたプレーをうまく表現できませんでした。チームとして、決して良くない状況です。この苦しい状況を打開するプレーで早くチームに貢献したいです。
Q、1トップの位置でプレーすることで相手の守備も試合を重ねるごとにタイトになってきていると思います。味方との連携や周りを活かすプレーについてはどのような意識が増していますか。
A、頂点の位置でプレーすることで様々なボールを攻撃に繋げなければいけません。例えば、ロングボールを自分が競り合った時にヘディングで渡すのか、そのまま自分が収めるのか、判断が求められます。そして、自分が判断したプレーに対して味方の選手から信頼をしっかりと得られないと、良いリアクションに繋がりません。僕のプレーを信頼して飛び出してくれたり、パスを受けてくれたり、高い位置でボールを扱う時間が長ければ、僕だけではなくチームとしての得点も増えると思っています。
<安斎颯馬選手>

Q、厳しい試合となりました。
A、前節はある程度、マルセロ ヒアン選手や佐藤恵允選手を活かすロングボール主体でうまくいきました。今日に関しても、試合の入りは同じような形を活かそうという話になっていましたが、それがうまくいかなかった。機能しなかったなかで、実際につなぐのか蹴るのかというところがチームとして合わず、終始チグハグした展開になってしまったと思います。
Q、失点してから相手を崩すのが難しくなってしまいました。
A、今日の試合はほとんどそこがすべてだったと思います。守備に関しては、前半はほとんど相手にチャンスを作らせていなかったと思いますし、あの一本で、清水エスパルスも余裕が出て後半もプレーできていたのだと思います。自分たちが前半の最後でゲームの展開を難しくしてしまったと思います。
Q、チグハグになってしまった要因はどのようなところでしょうか。
A、蹴る判断、つなぐ判断を全体で揃えられなかった。最初は蹴って押し込もうという明確な狙いを持っていましたが、そこから次のフェーズに移る瞬間がどこなのかという、そういった共通認識を合わせなければいけないと思います。
Q、課題が見えたことはポジティブに捉えられますか。
A、いえ、そこはずっとやってきていることですし、試合中に改善しないと、毎回同じことの繰り返しになってしまうので、試合中にもっと改善できるようにしたいと思います。
Q、今は3バックの一人として、自分から指示や発信をしていくことも必要になりますか。
A、僕が後ろをやる以上は必要になってくると思います。難しいところではありますが、それでも与えられたところでやらなければならないと思っているので、自分にできることを精一杯やりたいと思います。


