2025シーズン開幕を2日後に控えた2月13日(木)、青赤の新キャプテンに小泉慶選手の就任が発表された。昨シーズンも三人体制のキャプテンとして背中でチームを引っ張り続けた彼が、松橋力蔵新監督の打診を受けて、悩んだ末に承諾した形だ。ピッチで闘志を前面に押し出してプレーする男は“力蔵トーキョー”で左腕に腕章を巻き、いかなる役割を果たしていこうとしているのだろうか。松橋監督が背番号37を指名した経緯、そして彼が胸に秘める覚悟とは。
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ファン・サポーターからは“アニキ”と呼ばれてきた。だが、小泉慶自身は「いやいや」と言って一蹴する。
「それはサポーターがつけてくれたフレーズだから、チームメイトやスタッフは絶対に『どこが“アニキ”だよ』って思っているはず。しゃべらなきゃいいのかもしれないけど、チームメイトやスタッフには全部バレているから」
ただ、イメージだけの“アニキ”から変わろうともしてきた。無冠が決まり、目標を見出しづらくなった昨シーズン終盤、小平には連日シュートを打ち込む小泉の姿があった。その理由を尋ねると、彼はこう答えた。
「2シーズン連続でカップ戦も含めてタイトルを獲れなかった、何も変えられなかった。これが現実。シーズンを振り返ると、個人も含めてまだまだ力が足りていない。小平での練習も残り1か月くらいしかない。それでも、日々を大事にしていくことが重要だと思う。残り数試合で何かを起こせるわけじゃないかもしれない。でも、来シーズンやその先につながるかもしれない。いつかのために、選手たちは信じて今を大事にするしかない」
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今シーズンも開幕前のキャンプから東慶悟に師事し、居残りでのパストレーニングにも取り組んできた。自分に矢印を向け続ける小泉の成長マインドセットがこう言葉を吐き出させた。
「自分のためにやっていることが、チームのためにつながる。自分がもっと選手として良くなっていくためにもチャレンジしないといけない。結果的にそれがチームの勝利にもつながっていくと思う」
そんな小泉の左腕に、腕章が巻かれるようになったのは必然だったのかもしれない。なぜなら新たに青赤の指揮官に就任した松橋力蔵監督が選手たちに求めたのは、まさに小泉が体現してきた主体的な行動だったからだ。松橋監督は小泉の「ありのままを見て決めました」と説明する。
「決して口数が多いわけではない。ただ、不言実行じゃないけど、いつも一生懸命で背中で語れる選手だと思いました。彼の一つひとつの行動を見てキャプテンに指名しました」
小泉本人も指揮官の打診を受け、「正直、引き受けるかどうか迷いました。本音で、正直にリキさんにも話して、もう少し時間をくださいと伝えました」と、即答は控えたという。
「昨シーズンのキャプテンは三人体制だったけど、三人と一人では全く違う。自分のなかでちゃんと腹をくくって『やる』と決めなければならない役割だと理解していたので、すぐには返答できませんでした」
決意を固めることができたのは、「ガラッとメンバーも変わらなかったので、僕のことを理解してくれている人も多いと思った。一人で何もできないことは自分が一番分かっているし、チームメイトも理解してくれていることが大きかった」と口にする。
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「ちょうどベテランと若手の間に挟まれて、色々な人の意見を聞いて、みんなに助けてもらいながらやっていければ良いと思った。ただ、それに甘えず、時には性格を変えて、パフォーマンスでもやらないといけない瞬間があると思う。成長はできると思っているし、自分にプレッシャーを掛ける意味でも、この一年間をキャプテンとして全うしたい」
明け透けにすべてを包み隠さず、さらけ出すつもりだ。背伸びもせず、丁寧に日々を積み重ねる姿勢を変えるつもりもない。「毎日、ピッチに入る瞬間、目の色を変えて取り組み続ける。そこだけは貫きたい」。指揮官の打診に頭を悩ます時間、多くの人から「一人で抱え込まなくていい」と声を掛けられ、松橋監督からも「声を出してほしいわけじゃない」と言われたという。
「そうやって周りが言ってくれたので、キャプテンとしてのプレッシャーはあるけど、悪い重圧じゃない。それに雰囲気作りを助けてくれる人がいて、自分を分かってくれている人も多い。練習で隙が生まれたり、強度が低かったりしたら、自分が強く言わなきゃいけない場面もきっとある。でも、常に言葉にするんじゃなくて、瞬間、瞬間を見極められる、そんな人になりたい」
助けも借りて、周りを巻き込みながら共に歩んでいく。松橋監督がめざす同じ絵を描き、人と人をつなぐことができるのは、そんなリーダー像なのかもしれない。
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「瞬間、瞬間でしっかりとした発言ができて、プレーでも見せられたら、色々な人が感じ取ってくれると思う。今シーズンは特に目の前の1試合をどれだけ大事にできるかだと思う。そこはしっかりと空気を作っていければいい。選手としてもそうだし、男としてカッケェ男になりたい」
男は黙って青赤──。
背中で語る男は、東京の“アニキ”を本気でめざすと腹をくくった。
Text by 馬場康平(フリーライター)
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