<前節・横浜FC戦のレビュー>
初陣で手にした大きな勝利だ。“力蔵トーキョー”がアウェイで臨んだ明治安田J1リーグ第1節は横浜FCに1-0で勝利し、キャンプから積み上げてきたものをしっかりと証明。開幕戦で見事に勝点3をつかんだ。
松橋力蔵新監督が率いるチームの初弾は、まさに“所信表明”とでも言わんばかりの流麗なパスワークから生まれた一撃だった。
後半16分、右サイドで白井康介選手が力強い縦へのドリブル突破からスローインを得ると、白井選手から投げられたボールは仲川輝人選手へと渡り、そのリターンを受けた白井選手から小泉慶選手、高宇洋選手とワンタッチでペナルティエリア中央に向かって角度をつけながら軽快につながれていく。そして中央の俵積田晃太選手がダイレクトで前方へ落としたところに右サイドから猛然と走り込んだ白井選手が狙いすました左足シュート。多くの選手が連動する形で鮮やかに決まったビューティフルゴールにアウェイゴール裏は大熱狂。殊勲の右ウイングバックも一目散にゴール裏のファン・サポーターのところへダッシュし、アウェイに詰めかけた多くの仲間たちと歓喜を分かち合った。
新たに3バックを採用した東京は、前半から中央を締めてくる相手を崩し切れず、硬くて乾燥したピッチにも悩まされて思うような攻撃を仕掛けることができない時間が続いていた。どう打開していくかが注目された時間帯に披露したものは、ボール保持と鋭い攻撃の両立をめざす指揮官のスタイルが凝縮されたような一発。それは“力蔵トーキョー”が秘めたポテンシャルと新生青赤の大きな未来を感じさせるものとなった。
<試合プレビュー>
さあ、ホーム開幕戦だ。
初戦で横浜FCから勝点3を手にした東京。味の素スタジアムで行われるファーストマッチで迎え撃つのは、同じ東京を本拠とするFC町田ゼルビア。昨シーズンの対戦で味わった“シーズンダブル“の悔しさは、青赤にかかわるすべての人に刻まれているはず。7位に入りながら東京ヴェルディを含めて両クラブに未勝利で終わってしまった現状を真摯に受け止めつつ、一戦必勝の構えで町田から白星を奪い取り、是が非でも開幕2連勝といきたいところだ。
選手たちも昨シーズンの町田戦で味わった屈辱を鮮明に記憶している。
小柏剛選手が「同じ東京都をホームタウンにするクラブにこれ以上負けてはいけないし、この試合には絶対に勝たなければいけない理由がある。昨シーズン、クラブとしては東京の3チームで順位が一番下だったし、町田にもいいようにやられて、大きな屈辱を味わった。ホーム開幕戦という意味でも大事ですけれど、この日だけは形とか内容とかじゃなくて、本当に気持ちを見せて勝たなければいけない」と想いを込めれば、森重真人選手は「昨シーズンは味の素スタジアムでなかなか勝てなかった。しかもホーム開幕戦の相手は二度も負けてしまった町田なので、選手たちも必然的にモチベーションは上がってくると思う。ホーム開幕戦はファン・サポーターのみなさんに勝利をプレゼントしたいし、そうしなければ納得してもらえないことも分かっている。絶対に勝利で終わりたい」と意気込む。
対する町田は昨シーズン、リーグ最少失点の堅守を中心にJ1昇格初年度から上位進出を果たし、リーグ3位でAFCチャンピオンズリーグエリート(2026-2027シーズン)の出場権を手にした。開幕戦ではサンフレッチェ広島に逆転負けを喫し、試合中に新加入のセンターバックに負傷者が相次ぐというアクシデントにも見舞われたが、大型補強で上位をめざす彼らにとっては連敗だけは避けなければならない一戦。まさに球際の戦いがポイントになりそうだ。
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町田戦を翌日に控えた2月21日(金)、常に目前のゲームにフォーカスする松橋力蔵監督は平常心を強調しながら、ホーム開幕戦での気持ちのこもったゲームを約束した。
「もちろん東京の2チームだけが相手ではないですが、ファン・サポーターのみなさんはかなり熱が入ると思います。そのボルテージやエネルギーをしっかりと感じ取って、僕らはボールを大事にするチームだからこそ、町田のような強度の高いチームに対して熱量やパッションでも相手を上回っていかなければいけない」
まずは立ち位置を冷静に見極め、相手を上回る予測と熱量でピッチを制したい。目と頭はクールに、ハートとプレーは熱く激しく──。
“力蔵トーキョー”がめざすサッカーをピッチで体現し、青赤軍団が味の素スタジアムで昨シーズンの屈辱を乗り越えて開幕2連勝をつかみに行く。
[松橋力蔵監督 インタビュー]
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Q、リーグ初戦に勝利したことで、良い流れでホーム開幕戦を迎えることができます。ファン・サポーターの期待も大きいと思います。
A、みなさんの期待に応えたいです。そのなかで、徐々に信頼をしてもらえるチームとなるために成長していく必要があります。アウェイでも素晴らしい応援をして下さっていたので、ホームとなるとさらに盛り上がると思います。みなさんの力もお借りしながら、一緒に勝利をめざしていきたいと思います。
Q、今シーズンからサブメンバーの登録上限人数も変わりました。
A、選択肢が多くなります。様々な状況に応じたプランを持つことができるので、そこはうまく活かしていきたいです。僕の欠点として、自分で良くないと思っているところは、交代のタイミングです。自分の想いや気持ちだったりが、戦術的なことよりも先に出てきてしまっていました。サブメンバーの数が増えたことによって、自分のなかでも色々と想定したなかで考えられるようになりました。手元の交代カードを増やせたことで、自分のなかでも思い切って代えやすくなったと思います。
Q、昨シーズンの対戦成績では東京都に在籍しているチームに勝利がありません。
A、よくその話を聞きますが、その2チームだけが相手ではありません。ただ、その戦いが重要なことは理解しています。その熱をしっかりと感じ取って、エネルギーにして戦っていきたいと思います。勝つためには相手を色々な意味で上回っていかないといけません。それは熱量やパッションでも上回っていかないといけないと思います。
[選手インタビュー]
<野澤大志ブランドン選手>
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Q、前節を振り返ってください。
A、チームとして勝ち切ったことがポジティブなことですし、まだまだ成長できると感じられた試合でした。チームとして勝ちながら成長していきたいです。個人としては、攻守に関わるプレーで質を求めていきたいですし、僕自身もチームのために成長し続けていきたいとあらためて思いました。
Q、試合状況を素早く判断し、時には割り切ったプレーなども見られました。
A、ピッチコンディションやその時の状況を判断して、リスクを管理しつつ、シンプルに幅を使ったプレーを意識していました。ボールを繋ぐことだけが目的ではないし、ロングボールを多用することだけも目的ではないと思っています。効果的に攻めること、組み立てることが大切だと思っているので、相手の嫌がるエリアやスペースにボールを送ることを継続して意識していきたいです。
Q、新たなシステムで戦ったなかで、守備のコントロールなど難しさを感じたところはありましたか。
A、どのようなシステムや守備陣形であっても、ピッチに立った選手たちが責任を持ってプレーすることは当たり前ですし、そのベースを選手個々が持っていれば、守備の堅さは必然的に出てくると思います。ただ、(自陣の)ゴール前にかけられる人数は増えているので、弾き返すパワーや揺さぶりに対して柔軟にケアできる強みもあると思っています。
Q、ホーム開幕戦はFC町田ゼルビアとの一戦です。警戒すべきポイントがあれば教えてください。
A、攻守において、“徹底したプレー”をしてくる印象です。球際、セカンドボールの回収など、勝利から逆算したハードワークを警戒したいです。ですが、恐れることはまったくないと思います。自分たちが“自分たちらしく”、思い切りの良いプレーを表現したいです。ファン・サポーターのみなさんもこの試合を楽しみにしてくれていると思いますし、熱い応援で僕らを後押ししてくれると思っています。その期待に応えるためにも、戦術的な部分もそうですが、時には大胆なプレーを表現したいです。味の素スタジアムで楽しんでもらえるように頑張ります。
<白井康介選手>
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Q、横浜FC戦の振り返りをお願いします。
A、アウェイでの開幕戦ということに加えて、グランドの状況もあって難しい条件での試合になりました。やりたいサッカーをすることはできませんでしたが、まずは勝点3を獲得できたのはポジティブなことだと思います。
Q、ウイングバックでの出場となりましたが、90分間を通してどうでしたか。
A、まだまだでした。先ほどもお話した条件的なところもありましたが、まだまだそこを含めても足りないことは多いので、これから良くなっていくと思います。
Q、横浜FC戦は相手も同じシステムでの試合となりました。
A、失点をしないことを意識していました。試合を終えて振り返った時にポジションをとる位置が低かったので、押し込まれてしまったところがありました。意識的に守備をしていたというよりは、守備をさせられていたというところが正直なところです。ウイングバックで出場している時は自分が押し込んでいかなければいけなかったです。そこは反省すべき点だと思っています。
Q、少ないチャンスを決め切り勝利に繋がりました。得点シーンを振り返ってください。
A、あのゴールは、本当に最後のフィニッシュが偶然にも自分だったというだけで、色々な選手が関わり良い得点ができました。松橋力蔵監督が就任してから中を突っついていけ、ということはよく言われているのでそれを体現できたプレーだと思います。
Q、東京に加入する前にもウイングバックの経験があります。その経験をチームにどのように還元していきたいですか。
A、アドバイスなどで還元できるものはしていきますが、僕自身も久しぶりなので、まずは感覚を取り戻すことが大切だと思っています。経験がある分、フィットは早いと思います。サイドバックとは違う自分が見せられると良いなと思います。
Q、昨シーズンのアルビレックス新潟戦でゴール決めた際に、久しぶりのゴールでパフォーマンスの仕方を忘れたといって、“超白井”が生まれました。今回はどうでしたか。
A、今回はかっこよかったと思います。ちゃんとパフォーマンスできたと思います。パフォーマンスというよりは感情のままゴール裏に行っただけになってしまいましたが(笑)。
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