<前節・セレッソ大阪戦のレビュー>
3バックの左ストッパーに安斎颯馬選手、左ウイングバックに俵積田晃太選手を起用し、状況に応じて3バックから4バックに変化する新布陣でアウェイのセレッソ大阪戦に臨んだ東京。北原槙選手がリーグ戦で初めてスターティングメンバーに名を連ねた。
チーム全体が流動的な立ち位置をとって攻撃を仕掛けていこうとしたが、立ち上がりからビルドアップにズレが生じるシーンが散見され、開始6分で最終ラインでの組み立てミスを突かれて早々に先制点を許してしまう。
序盤に何度も危ないシーンを作られながら1失点で耐え抜くと、前半17分に初スタメンの背番号53が試合を動かす。左から仕掛けた北原選手が中央にパスを差し込むと、ワンフェイント入れて相手ディフェンダーをかわしてシュートを狙おうとした佐藤恵允選手が倒されてペナルティキックを獲得。これを佐藤選手が冷静に沈め、東京が試合を振り出しに戻した。

タイスコアで迎えた後半立ち上がり、俵積田選手が左から持ち込んでシュート。これはゴール右に外れたが、勝ち越しを狙って積極的な姿勢を見せていく。
状況打開を図りたい東京は後半16分に投入されたマルセロ ヒアン選手がゴールへ強烈な矢印を向ける。同21分には縦方向へのパスにヒアン選手が抜け出し、鋭く力強いランニングから相手を弾き飛ばすようなドリブルを披露。同37分にも相手選手に競り勝ってコーナーキックを獲得するなど、ミッドウィークのRB大宮アルディージャ戦でハットトリックを決めた好調さを感じさせるプレーだった。
全体的に単純なミスが目立ち、試合終盤もC大阪に何度もチャンスを作られたが、身体を張ったプレーでゴールは許さず。試合はこのままアウェイで1-1のドローに終わり、リーグ戦は8戦未勝利という結果となった。
<今節のプレビュー>
前節から中4日。国立競技場での金曜ナイトゲームでガンバ大阪を迎え撃つ。
ここまでリーグ戦8試合で勝利できていない東京。最近は試合終了直前であったり、単純なミスが原因でゴールを許すシーンも散見されており、松橋力蔵監督も「もったいない失点もあった。内容がどうこうよりも勝つことを頭に置きながらどうプレーしていくか。方法論や戦術的な部分で目線を合わせることは大事ですけど、実際にゲーム内でどうするべきかを合わせていかなければ」と課題に関する目線合わせを進めようとしている。
チームが抱える課題を解決する一つの方法が、ピッチ内でのコミュニケーションを増やしていくことだ。的確に展開を読み、どう戦うかの目線合わせをしていくことで試合の流れを引き寄せたい。前節で3バックの中央に入った岡哲平選手が、コミュニケーションの重要性と自身の覚悟について語る。
「プロの年数や年齢は関係なしに、誰に対しても要求したり、チームを盛り上げたり引き締める声は積極的に出さないといけない。自分はそういうポジションでもあると思うので、試合後やハーフタイムではなくて試合中から自分が先頭に立ってリーダーシップをとらないといけない。サッカーでは同じ絵を描くことが大事だし、それは声で解決できることが多いと思う。試合に出ている11人が常にコミュニケーションをとり続けて、お互いに助け合いながら目線を合わせて戦っていきたい」
目線を合わせるという意味では、マルセロ ヒアン選手の持ち味をピッチで引き出せるようになってきた点は大きなプラス材料だろう。ある程度のアバウトなボールでも前方のスペースにタイミング良くパスを出すことで、彼のパワフルな突破が活きる。前週に行われた2025Jリーグ YBCルヴァンカップのRB大宮アルディージャ戦でのゴールラッシュ、そして前節セレッソ大阪戦の後半に見せた右サイドからの突破は、まさに彼が持つ武器が引き出されたもの。松橋監督も「本当に走力とフィジカルの強さはありますし、ボールをしっかり収められる場面もある」と信頼を寄せる。青赤のポイントゲッターになれる逸材だ。彼を中心にゴールに襲いかかるようなファイティングポーズをとり続けることが相手の脅威となるはず。勝っていれば追加点を、タイスコアなら勝ち越しゴールを、そして劣勢なら反撃弾を。チームとして常に“怖さ”を持つことで戦い方の幅を広げていきたい。

過密日程の真っ只中にあるだけに、今節も総力戦となることが予想される。松橋監督も「各選手のタイムリーな状況を確認しながら、しっかり判断していく。そこのうえに相手の戦術的なものやの力関係、選手のコンディションなど、様々な要素を加味したなかで考えていければ」と口にする。
対するG大阪はここまで4勝2分5敗の12位、先制点を奪った試合は4戦全勝、先制された試合は2分5️敗という成績だ。東京も先制した試合が2勝1分、先制された試合が2分5️敗という結果であることを考えると、普段以上に先制点の重要性が高くなるゲームとなる。G大阪はもともと守備が堅く、ボールをしっかりとつなぐサッカーを掲げているだけに、お互いのスタイルが激突する試合になりそうだ。
そして今週、苦しむ青赤軍団に頼れる男の気迫が注入された。昨シーズン限りで現役を引退してブラジルに帰国していたディエゴ オリヴェイラ氏がチームを訪問。クラブアンバサダーとして初来日し、G大阪戦に向けて調整を続けるチームを力強く激励。24日の練習前には全体ミーティングでもあいさつした。

ディエゴ アンバサダーは前日練習後の囲み取材で、クラブとファン・サポーターへの想いをあらためて口にする。
「東京に今の順位はふさわしくない。サッカーには苦しい時はあると思うけれど、ここで結果を出すことで殻を破ってもっと良い成績が出せるはず。みんなも勝つために努力して練習しているし、自分も現役時代はそうだった。それでも勝てないという現実があるならば、やるしかない。足りないのなら、もっともっとやるしかない。どんな時でもファン・サポーターのみなさんは応援してくれている。みんなの声援は本当に選手の力になっていますし、現役時代も今もすごく感謝しています。チームと一緒に力を合わせて乗り越えていって困難な時期を乗り越えていってもらいたいと思っています」
[松橋力蔵監督 インタビュー]

Q、ここから連戦となります。
A、コンディションをしっかりと調整しながら、良いテンション、良い悩みを持てています。
Q、良い悩みとは具体的にどのようなことでしょうか。
A、すべてがうまくいくわけではないこと、次の試合に向けてどのように仕上げていくかを常に考えられていることです。
Q、この期間で選手たちにフォーカスしたことを教えてください。
A、試合の振り返りもそうですが、チームとしてやり続けることが重要です。いらない失点、もったいない失点もありましたが、ゲームの内容もすべてが悪いわけではありません。内容どうこうではなく、勝つことを念頭に置いて、どのようにプレーしていくかを意識していきたいです。方法論や戦術的な部分で目線を合わせることは大事ですが、実際にゲーム内でどうするべきかを合わせていかなければいけません。
Q、選手の目線は試合を重ねるごとに合ってきていますか。
A、トレーニングではしっかりと目線合わせができています。あとは質を常に求めていきたいです。
Q、ガンバ大阪の印象を教えてください。
A、守備の堅さがありますし、ボールを動かす技術やメンバーもタレントが揃っています。個々の能力を活かした、時間の使い方や違いを見せる場面も多くある印象です。
[選手インタビュー]
<小泉慶選手>

Q、セレッソ大阪戦は途中出場の選手たちのハードワークもあり、引き分けに終わりました。勝ちにつなげるために必要なことを教えてください。
A、もちろん、チャンスの回数を増やすことも大切ですし、しっかり決め切ることも重要です。それが良いのか悪いのかは分からないですが、もう一回初心に立ち返ることが個人としては重要だと思っています。1対1の局面で負けない、簡単にクロスを上げさせない、攻撃面では、一つひとつのプレーにもっとこだわりを持つこととか。戦術的なミスじゃなくて、選手それぞれが技術的なミスに対してしっかりこだわることを突き詰めていきたいです。
Q、個々の意識で改善できるイージーミスがピンチを招いてしまうシーンもこれまで多くありました。
A、もちろん、こういうチャレンジしたサッカーを表現する分、ミスはつきものです。例えば、ゴールキックから全部綺麗にパスをつないでゴールを決め切ることは、相当クオリティが高くないと難しいです。全部が全部、正直に真っ向からチャレンジするのではなく、前線に強い選手がいたらシンプルに蹴って良い時もありますし、長いボールを蹴るなと言われているわけでもありません。試合に出ている選手の判断やピッチ上の状況をプレーに移せるかどうかです。選手一人ひとりの良さがあると思いますし、ドリブルが得意な選手がいれば、ドリブルで仕掛けやすいゾーンを作るために味方がサポートする。背後への抜け出しが得意な選手がいるなら、長いボールやスペースをうまく使うことが良さを活かすプレーにつながります。選手それぞれの良さをチームとして出していきたいです。
Q、次のリーグ戦出場で、J1リーグ通算300試合出場になります。
A、チームとしての記録ではなく、個人的なことなので、ここまで積み重ねてきたものをしっかりと受け止めて、引き続き頑張るだけです。
Q、ディエゴ オリヴェイラ氏がアンバサダーとして小平グランドを訪れていました。何か刺激やパワーのようなものを受けとられたのではないですか。
A、東京で長らく活躍してきた選手の一人ですし、久々に会えたことが素直に嬉しかったです。せっかく日本に来てくれて、ガンバ大阪、清水エスパルスとの2試合を観戦してくれる。ディエゴに対しても勝ち試合を届けたいです。
<岡哲平選手>

Q、一つ殻を破るプレーやディフェンスリーダーとしての統率も、岡哲平選手には求められてくると思います。
A、森重真人選手がスタメンから離れているなかで、誰かがリーダーシップをとり、まとめ上げなければいけません。今シーズン、コンスタントに最終ラインの一人として出続けられていますし、加入2シーズン目とは言え、そこは関係なしに、誰に対しても要求したり、チームを盛り上げる声や引き締める声などで引っ張っていきたいです。
Q、難しい試合を勝利につなげるためには、選手間で同じ絵を描くことやコミュニケーションがさらに重要かと思います。
A、サッカーは声で解決することが多いと思います。誰かが、ではなくピッチ上の11人が常にコミュニケーションをとり続けて、プレーを合わせないといけません。静かな状態がないような状況を作り出したいです。
Q、対戦するガンバ大阪の印象を教えてください。
A、高さと強さがある選手、スピードある選手が前線に揃っています。僕らディフェンス陣が相手の良さをしっかりと抑えることができれば、チームとして勢いが出ると思います。相手の起点となるところを、予測を活かしてしっかりとケアしていきたいです。選手個々の単発のプレーにならないように、チーム全体で周りのサポートやカバーリング、どの局面においても連動したプレーやサポートを意識していきたいです。サッカーはチームスポーツです。助け合いながら試合を進めていきたいです。
Q、攻撃の面では、スピードを特長とするマルセロ ヒアン選手や佐藤恵允選手も前線には揃っています。そこに供給するボールを利き足の左右に関係なく蹴られる岡選手の良さもここから増すと思います。
A、チームスタイルとしてボールを保持するなかで、どう自分の良さを活かせられるかだと思います。チームとしてボールを握る時間をしっかりと確保しつつ、そこに僕自身の特長を合わせていく意識を強めていきたいです。ヒアン選手や佐藤選手の良さを活かす長いボールや、時には一本のパスやサイドチェンジで攻撃の流れを変えること、相手の目線を変えることも意識していきたいです。


